くらし

コラムニストで茶人の中村孝則さんの、茶が欠かせない男の厨房。

料理にまつわる仕事をしている男性たちの台所には、工夫と思想が詰まっていました。
  • 撮影・三東サイ 文・太田祐子

台所仕事は、釜鳴りを聞きながら。

寄せ木細工の飴色の床に、木材がふんだんに使われた内装。

世界中を仕事場にワインや美食についての著述を重ねてきた中村孝則さんの住まいは、マンションの一室とは思えない温かな印象だ。

厨房を覗けば、コンロには常に茶釜がかかり、釜鳴りのシューッという音が心地いい。シンク正面には厚い木の板が敷かれ、茶碗や茶筅が並べられている。

中村さんは「寿福庵」の庵号を持つ茶人でもあるため、暮らしに茶の存在は欠かせない。抹茶、煎茶はもちろん、コーヒーも味噌汁も茶釜で沸かした湯を使うと格別においしいそう。

「師匠には怒られそうだけど。でもいいの! 不良茶人だからね」と破顔一笑。なんともチャーミングな茶人なのだ。

その不良茶人の生活もコロナ禍をきっかけに規則正しく健康的に一変した。

「夜ごと酒を飲んで美食を楽しんでという日々だったんですが、今は完全に朝型シフト。体調もいいし、午前中に原稿もはかどるからいいことばかりですよ」

毎朝7時前には起床して、妻とふたりで厨房に立つ。

朝食はもっぱら和食で、20年来使っている土鍋で米を炊き、味噌汁を作り、主菜を1品用意する。

最近ハマっているのが沖縄のサクナ(和名ボタンボウフウ)。長寿が期待できる長命草とも呼ばれ、実際、抗酸化物質などを多く含んでいる。中村さんはこれをジェノベーゼソースのようにして、パスタはもちろん、茹で野菜や豚肉にかけて常食しているという。

「おかげで疲れ知らず!」

健やかな日々はしばらく続きそうだ。

常にコンロに鎮座しているという茶釜。「完全にやかんみたいになっていますね」と笑うが、その美しい佇まいにきちんと手入れされていることが窺える。奥に見える愛用の土鍋もいい風情。

スペシャリテは、 沖縄のサクナで作ったソース。

中村さんの健康を支えるサクナ。沖縄の知人に定期的に送ってもらい、オリーブ油、ナッツ、チーズと一緒にミキサーにかけ、ジェノベーゼソースのようにして使う。

さっと水気を吸い、すぐ乾く手拭いを台所でも愛用。

剣道の教士でもある中村さん。少しくたびれた木綿の手ぬぐいはすぐ乾くため、台所で使うのにもってこい。使わなくなった水切りかごに揃えて入れ、吊戸棚に収納している。

ダイソーで 見つけた木製の皿立てで問題解決。

器同士がぶつかって欠けることが多かったため水切りかごを廃止。代わりに見つけたのが木製の皿立てだ。「これだとあたりが柔らかくて安心。場所をとらないのもいいですね」

格安で手に入れた機内カートが台所のアクセント。

20年ほど前、放出品で手に入れたANAの機内カート。ロックを外して扉を開くと引き出しがきっちり収まっている。「コーヒー豆やお菓子、備蓄品や薬などを入れています」

(お気に入りのひと皿)

「我が家の朝食、ほぼ定番の形です。ごはんと味噌汁に納豆、卵、たくあん。それに届いたばかりの、沖縄の島らっきょうとサクナの自家製ソースです」

中村孝則

中村孝則 さん (なかむら・たかのり)

コラムニスト

ファッションから旅まで寄稿。「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長、大日本茶道学会茶道教授。剣道教士七段。

『クロワッサン』1067号より

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