「社交ダンス」は生きる証。漫画家・槇村さとるさんの踊る習慣。
あの人の所作のしなやかさ、表情の晴れやかさはどこから?踊ることを習慣にする槇村さとるさんが語る人生への効用とは?
撮影・岩本慶三 文・松本あかね
踊りたい気持ちを解放! 新しい自分を知って、もうやめられない。
小さな頃からダンサーが憧れだったという槇村さとるさん。作品にも数多く描いてきた。50代の終わり、胆石の手術後に体調を崩し、それからようやく回復し始めた頃、知人に招かれた社交ダンスの発表会で衝撃を受ける。
「きれいなドレスで燕尾服の男性にエスコートされて踊りまくる70代、80代の生徒さんたちを見てたら、泣けてきたの。みんな、楽しそうだったから」
次の日にはダンススクールの扉を叩き、今では週3回レッスンに通う。
踊るのは専らタンゴ。女主人公の設定から始める。
“パーティ”と呼ばれる発表会の演目を決めるときは女主人公の設定から入るそう。彼女はどんな人? キズは?仕草は?「本来はもっと純粋にステップを楽しむ競技だと思う。でも私はそこに内面性やドラマを求めてしまう」。もしかして漫画と同じ? 「絵で描くか、体で踊るかの違いだけね」
6年が経ち、1時間のレッスンも踊り切るスタミナがついた。「足の裏から背中から、通っていなかった神経が増えたみたい。心拍数が上がって、汗をかいて、生きているなあという感じ」
「今は大事なことが3つだけ。踊ること、漫画を描くこと、キムさん(夫で性人類学者のキム・ミョンガンさん)といること。それ以外のことで消耗するには人生は短すぎない? 自分にはもう新しいことは訪れないなんて嘘だから、何でも始めてみて!」
『クロワッサン』1061号より
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