気がつけば、物が溢れる親の家。ここがポイント、実家の片づけ。
イラストレーション・SUNA.
台所、リビング、寝室、様々な部屋があるのですが、どこから手をつけたらいいのでしょうか。
[鉄則5]まず問題が生じているところだけやりましょう。1カ所からでいいのです。
何年も引っ越しをせずに暮らしてきた家は、どこもかしこも物がいっぱいなことがほとんど。でも、最初から全部やろうと思わないように、と阿部さん。
「忘れてはならないのは、片づける側も若くはないということ。疲れて途中で終わっては意味がありません。ちょっとやる→ちょっとやる→大きくやる→ちょっとやるという感じで、繰り返していると、大きく片づけられる時もやってきます。
まずは1カ所だけ、もっと言えば、引き出しの中だけでも片づけられればよしとすること。1日、2日で終わらせようと思わないことが大切です」
阿部さんの実家の台所リフォーム。
多くの主婦にとって台所は聖域。ただ、その場所も年齢とともに見直しが必要と阿部さんは言う。
「道具は、よく使っているものだけを残し、基本的には軽くて使いやすいものに新調を。また汚れはシンク周りだけでなく、換気扇もチェックして。状況によってはリフォームして、親にとって使いやすく安心な台所に変えましょう」
【Before】
↓
【After】
実際に片づける時に覚えておきたい段取りを教えてください。
[鉄則6]残しておく大事なもの、売れるもの、 捨てるものの3種類に分けましょう。
「繰り返しになりますが、親が何を大事に思っているかの聞き取りから始めます。その上で、大事で残しておきたいもの、使わないがきれいで捨てにくいもの(売れるもの)、捨ててよいもの、の3種類に分けるのがポイントです」
さらに捨てる基準は5つあり、2つ以上当てはまったら捨ててよいと阿部さん。
「それは、(1)5年以上使用していない、(2)何年も散々使用して古くなっている、(3)修理して使用できるが、費用がかかる、(4)存在すら忘れていた、(5)未練や物語がない品、です」
分類ができれば問題解決はすぐそこ!
着道楽の母。部屋には洋服や着物が溢れています。
手頃な衣装箱を買って整理するのはどうでしょうか。
[鉄則7]入れものを買うのは最後。もし買うならいいものを。お金はそこに使いましょう。
「ダメダメ、安い洋服掛けや衣装箱などを簡単に買わないこと! また本人が使い方を理解しなければ、そのうちに上に物を置いたりして、結局は家具が増えるだけになってしまいますよ。
そして、もし何か買うのであれば、人生の残り時間が多くない親だからこそ、最高のものを買ってあげてください。いっそ、ウォークインクローゼットを作ってあげるくらいの気持ちでのぞみましょう」と阿部さん。
例えば古い布団を捨て、押し入れの中にクローゼットを作ったり、和だんすに今入っているものを整理するなど、ある場所を活用して収納するのが先決だ。
片づけに行く日に用意していったほうがいいもの、あると便利なものを教えてください。
[鉄則8]ゴミ袋やポリ袋はできるだけ多めに。 マスクと軍手も必須です。
「大きなゴミ袋やポリ袋は分別するためにも必要。たっぷり持っていきましょう。埃が多い場所ですからマスクも必須です。何が置いてあるかわからない場所を触る時には、軍手をはめて作業しましょう」
親が取っておきたいと言ったもの以外の、捨てるか売るかは、即断即決で進めていきたい。整理する側が迷っていてはいつまで経っても終わらない。
「5年以上使用していないという点を大事な判断基準とし、いるいらないを決めましょう。また作業中は、窓開け、換気も忘れずに! 疲れている時に埃を吸い込めば、体調を崩す原因になります」
片づけの日、きょうだいに一緒に行ってもらったほうがいいでしょうか?
[鉄則9]絶対1人でやらず、きょうだいと共同作業にし、目撃者を作っておくこと。
「基本的に、親は家にあるのは『自分の所有物』だと思っており、それは不要なものではないという認識でいると捉えてください。これを理解せず、片づけることで関係性が悪くなることはよくあることです。
勝手にではなくとも、片づけた後にあれがなくなった、これを捨てられた、と言われることもよくあること。一番いいのは親と一緒の時間が多い人、世話をしている人の意見を尊重し、きょうだい(義理も含める)と進めることです」
1人でやると疲れるし時間もかかり、お金もかかる。まず話し合いの日時から皆の都合を聞いて共同で進めよう。
最低限、ここだけは片づけ、ここはそのまま、という目安はどう決めたらいいでしょうか。
[鉄則10]掃除にもハレとケの場所があります。 安全ならケの場所はそのまま置いておきましょう。
「実家の片づけで大事なのは、無理やりきれいにすることはない、とある程度諦めることです。
掃除したいのは少なくともハレの場所。つまり人が入る場所、玄関やリビング。そして、転ばないように床からは物をなくす。安全であれば、ケの場所はぐちゃぐちゃだって別に構わない、という気持ちになって。
ケの場所は寝室や台所などですね。ただ、1カ所でもすっきりとすると、人は変わってきます。自分の必要とするものがわかれば、自分で片づけるようになれますよ」
こちらの意識の持ち方と諦めも非常に大切なポイントのようである。
『クロワッサン』1062号より