「高齢の親御さんについての相談を受ける際、その年齢が90代、100歳前後という場合も珍しくなくなりました」と語るのはファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さん。
「つまり、親が今80代でも、これから先20年の老後が続くことも充分考えられます。そして通常、長生きとともに健康面をはじめとした『困りごと』は増えていきます」
長生きすればするほど、生活に支援が必要になり、認知症を患う確率も高まってくる。だからこそ、長い老後を見据えて、家族で事前に話し合っておくことは不可欠だ。とはいえ、言い出しづらいのも事実。
「親の老後の話をするとき、最大のポイントは、『親ファースト(親のため)』の姿勢を貫くこと。そのなかでも特に、最初のコミュニケーションを間違わないことです」
内藤さんは、「お父さん、お母さんに幸せに暮らしてほしい。できることがあればサポートしたいから、希望を教えてほしい」という姿勢が、子どもからのコミュニケーションのスタートラインだと語る。
「最悪なのは、何から話していいかわからず、相続や遺産の話を始めてしまうこと。親の身になってみれば、いくら親子でも、たまに会った子どもからいきなりそんな話をされたら、不信感を持ち、感情的にこじれてしまうこともあります」
「親ファースト」のコミュニケーションには、無駄な動きをしないですむメリットがある。例えば親の希望が「できるだけ実家に住み続けたい」のであれば、子ども側もそれに合わせた情報収集をし、支援をしていけばいい。
ところで、兄弟姉妹がいる場合、こうしたことは単独で行わず、事前の根回しが重要。
「勝手にやっていると思われないように、また誰か一人が背負うことにならないように、足並みをそろえることが大切。協力してくれない場合でも、情報を遮断してしまわず、『こういう話をしようと思う』と耳には入れておきましょう」
元気な人が早く亡くなってしまう、病気がちの人が長生きすることもあるように、人の寿命はわからない。
「ただ、親の健康、家のこと、お金のことは、長期にわたる『困りごと』になる場合もあります。兄弟姉妹という横のつながりも重視しながら、家族で支援していくのが理想形です」