くらし

気がつけば、物が溢れる親の家。ここがポイント、実家の片づけ。

年老いた親が暮らす家は捨てられないものでいっぱい。親とのコミュニケーションからスムーズな片づけ法まで、守るべき鉄則とは。
  • イラストレーション・SUNA.

生活研究家として、家事全般から片づけまで、豊富な知識と合理的なアドバイスが人気の阿部絢子さん。そんな阿部さんの母は、新潟で一人暮らしをしていたが、89歳の時に倒れてしまう。

「母が病院に搬送されたと言われ、驚いて帰ってみると、いつの間にか家じゅうが物だらけ。特に廊下は趣味の道具で溢れ、窓が開かなくなって熱中症を引き起こしたとわかったんですよ!」

そうでもなければ、親の家を片づけようとは思わなかった、と阿部さん。

「親は子どもに片づけられたくない、それは確かなんです。でも安全で安心な暮らしをしてほしいですよね。まずその仕組みだけ作ってあげましょう」

久しぶりに実家に帰ったら、ともかく物がいっぱい。
そのほとんどは今必要のないもの、使わないものばかり! どうしたらいいのでしょうか。

[鉄則1]スッキリさせたい、は子どもの勝手な思い。無理に捨てたり、 片づけるのは絶対だめ!

「実は、子どもが親の家を片づけたいというのは、自分都合の考えのことが多いのよね。基本的に親の家は親の家。それは子もきちんと理解すべきだと思います。家のあり方を含めて、その人の人生だもの。だから勝手に片づけちゃだめ。それは親を尊重してないってことです」と阿部さん。

ただし、物が置いてあることで転びそうになる、ドアが開かないなどの問題があるなら話は別。

「まずは話し合いを。何が必要なのか、これからどんな使い方をするのか。物が多すぎる時は、優先順位を聞いて、大事なものの順序を決めてもらいましょう」

阿部さんの実家の廊下は…。

【Before】

様々なものと華道の道具であふれた廊下。左側は庭に通じる引き戸。全く開かなかった。

 ↓

【After】

5年以上使っていないものは捨てた。華道の道具は2階、 ほかも本来の場所へ移動した。

阿部さんの実家の納戸片づけ。

階段下の納戸は、どこの家でもトイレットペーパーや洗剤など様様な備蓄品で溢れがち。積み重ねた段ボールや紙袋、紙箱なども多く入っていて場所塞ぎになっているため、奥には何があるのか全く把握できず……。

そこで、工務店に頼んで棚を作ってもらい、何が入っているか一目でわかるようにリフォームしてもらった。今あるものがわかればこれ以上買うこともない。

【Before】

買ってきたビニール袋のまま吊されたものも。そこから出し入れして使っていた。

 ↓

【After】

階段下は奥深いが、奥のスペースは使わず、手前だけ使うことにして棚を設置。

冷蔵庫も冷凍庫も古くなった食品でパンパン。
備蓄品も買い込みすぎていて納戸もぎゅうぎゅうです。

[鉄則2]今あるものを「見える化」する手助けを。 片づけるより、整頓する気持ちで。

「高齢者がコロナ禍で買い物に行くことを避けようとして、備蓄品が増えてしまうのはある程度しかたのないこと。
ただ同じものがありすぎるなら、片づいてないから、あるのを忘れてまた買ってしまっているのかもしれません。
今あるものを種類ごとに並べて、何があるのかわかるようにしてください。例えば洗剤何袋、ティッシュ何箱、大根何本、にんじん何本というように、買った本人が一目で確認できるようになればいいんですよ」

納戸であれば、阿部さんの実家(「阿部さんの実家の納戸片づけ。」コラム参照)のように、棚を作って「見える化」しやすくするのも一案だ。

もう着ない服や大家族だった頃の器類。整理しようとしても、いちいち反対して簡単に減らすことができません。

[鉄則3]親が育った時代を考えて。  「捨てよう」ではなく「売ってみない?」 と言いましょう。

クローゼットや台所の食器棚、そして押し入れ。昔は5人家族でお客さんも来たから必要だったものも、今はほとんど必要がないのに捨てられず保管しているということはよくあること。

「親が育ってきた時代を考えてみて。もったいない、物は貴重という時代を経て大人になった世代です。まずは、どれを大事にしているか聞き、あまり使っていない、今後使う予定もない、とわかっても、『じゃあ、捨てたら?』と言うのは逆効果。『売ればいいんじゃない? 取りに来てくれる人、呼んでいい?』と言うと安心してくれると思いますよ」

昔はきれい好きだった母。あまりの変わりように、こちらもつい責めるような口調になってしまいます。
言ってはいけないNGワードはありますか?

[鉄則4]責めてはことを仕損じる。 心をほぐすような言葉で話し合いを。

若い頃きっちりしていた母親が片づけられなくなると、寂しいやら情けないやらで、こちらも動揺してしまうもの。

「年齢を重ねたら、体力、集中力、判断力が鈍るのは当然のこと。やりたいと思っていてもできなくなるんです。きちんとしていた人ができなくなった場合は、できるだけ指摘せず、使いやすいように整頓だけしてください。
そして、どんなタイプの親にも、なぜこんなにあるの?とか、もう使わないでしょ、などという言い方は避けましょう。暮らしやすくするために、こうしてみない?というニュアンスの提案型で、話し合いましょう」

NGワードの言い換え術

×  どうして冷蔵庫の中にここまで物が詰まっているの? 買いすぎよ
 ↓
◯ 食べ物たくさんあるね! もらって帰っていい?

×  こんなにたくさん服があっても着ないよね。捨てたら?
 ↓
◯ これ昔の服よね、懐かしい! もう着ないなら売ってみない?

×  客用の布団が多すぎ。誰も泊まってないじゃない?
 ↓
◯ 布団を少し減らしたら押し入れの中をクローゼットにできるよ

同じ意味合いでも親を責めるのではなく、前向きかつ柔らかな言葉で提案を。

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