くらし

持病や障がいのある犬も、人と一緒に幸せに生きるために。

保護した犬や猫の新たな飼い主を見つけるために奔走している人たちがいます。見えてきたのは、今ある命をもっと大切にしようということ。
  • 撮影・黒川ひろみ イラストレーション・オカタオカ 文・篠崎恵美子

「コロナ禍になる前、保護した犬と猫は毎年1000匹を超えていました。昨年は少し減って700〜800匹、今年はレスキュー要請が多かったのでもっとたくさんになるかもしれません」

NPO法人ペット里親会の代表・上杉美恵子さんが、埼玉県ふじみ野市で保護犬と保護猫のためのシェルターを作ってから20年近く経つ。広い敷地内には犬と猫に分けたプレハブが数棟あり、数年前にはドッグランも作った。訪れた日は、大型犬のグレート・ピレニーズとゴールデン・レトリーバーが元気に走り回っていた。

スタッフに毎日たっぷり遊んでもらっている。豆柴の豆乃は緑内障で目が見えないが、カメラのほうを向いてくれた。奥は恥ずかしがりやのたんぽぽ。

今までに保護した犬と猫は2万匹以上にのぼるという。

「昔は雑種もいましたが、今はブランド犬が多いですね。コマーシャルや映画、漫画などでもてはやされる犬種に多くの人が飛びついてしまうんです」

家庭犬には向かないシベリアンハスキーを一度に何匹も保護したことも。中型、小型犬であっても、思っていたのと違う、汚い、言うことをきかない、世話が面倒くさい、などと簡単に飼育を放棄してしまう人が後を絶たない。

「里親さんが見つからず一生ここで過ごしても幸せなよう、万全を尽くしています」

「最近はペット業者の破綻、ブリーダー崩壊が増えています。劣悪な環境下で飼育されている犬たちの現場に行くと、強烈な臭いでこちらの体にも染み付いてしまうんですよ。また高齢の親が病気で犬を飼えなくなった、家じゅうがゴミ屋敷になった上にたくさんの犬と猫で崩壊している……という相談も増えていますね」

自分が助けられるなら助けたい。上杉さんは要請を受ければ全国各地に飛んできた。そして引き取った犬たちをシェルターに連れて帰り、スタッフが手厚くケアをする。健康診断によって重い病気が見つかることも多く、中には手術を必要とする場合もある。だから上杉さんはシェルター内に動物病院も作ってしまった。

シェルターにはトリマーと獣医が常駐している。保護されて、ときにボロボロな状態であっても、プロの手厚いケアで健康を取り戻していく。

「最初は去勢と避妊のための簡単なクリニックを作るつもりだったんです。でも病気の子、障がいのある子にも幸せになってほしいし、完全に治せないとしても点滴や酸素テント、ICUで楽にしてあげたい。ずっと里親が見つからずここで一生を過ごす子の老齢期のためにも医療が必要ですから。今5〜6人の獣医さんが通ってきてくれています」

シェルター内の犬たちは日頃から安心しているせいか人懐っこく近寄ってくる。つねに約120匹の犬が新しい家族を待っている。

ゴールデン・レトリーバーのアクアは推定4歳のオス。左前脚がないが元気そのもの。

「今、保護犬ブームでしょう? もらってあげる、という態度の方もいますが、それはちょっと違うと思います。犬の一生を預かるわけですから、犬とはどんな生き物かを理解した上で迎えてほしいんです」

ペット里親会では、希望者はまずホームページにあるアンケートに「里親希望」を出して、その後、家の中や庭の写真などを送る。この環境なら大丈夫そうとスタッフが判断したら、面談をしてかかりつけの獣医から飼育に関する知識などを伝える。その後、その家庭に合いそうな犬とお見合いをしてもらい、1週間から10日間のトライアル期間をその家庭で過ごす。本決まりになるまで、上杉さんは手間も時間も惜しまない。

「どうしてここまでするの?と思われるかもしれませんが、最後まで愛情を持って飼うことができる人なのかどうかを判断しなければならない。犬の一生が幸せであるために絶対に必要なことなのです」

シェルターで寿命を終えた犬は、たくさんの花を用意して皆で見送る。

NPO法人 ペット里親会

埼玉県ふじみ野市大井896・3
TEL.049・264・6614
活動の様子は代表の上杉美恵子さんが毎日更新しているブログで見ることができる。
http://blog.petsatooyakai.com/ 
里親希望はホームページのアンケートへ。

『クロワッサン』1056号より

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