料理家の坂田阿希子さんは、自宅の窓を全開にして空気を入れ換えてから、新しい朝を始める。それから、お湯を沸かして今朝の茶葉を選んでポットで紅茶を淹れる。
「真冬であろうと早朝だろうと、起きたら窓を開ける。そして熱い紅茶を淹れる。もう儀式みたいなものです」
それは旅先でも同じで、ホテルに着いたら現地の茶葉を買いに出かける。
「365日紅茶を飲みます。お茶を淹れる3分間で気持ちがリセットできるのがいい。旅先でもくつろげます」
偶然が重なり導かれるようにスタートした洋食『KUCHIBUE』は、隣の庭を借景にした大きな窓が印象的で、芳しいソースの香りが幸せな記憶を呼び戻す。カウンター席の背面の壁とレジ横に、ずっと見ていたい大好きな画家の作品をかけている。坂田さんはここでゲストたちの「おいしい!」の声に耳を澄ませ、笑顔で立ち働いている。