江原啓之さんに聞く、2022年の心構えと運気を整える9つのキーワード。
東京から熱海に居を移して2年余りとなった江原啓之さん。
家事をこなし、自然のなかで丁寧に暮らすその日常には生きるための土台を整える、ヒントが詰まっています。
新たな年に始めたい、家と自分の整え方を聞きました。
撮影・小川朋央 文・やしまみき
4. 一日のリズムを整える。
「朝は6時に起きてね、犬と散歩して、掃除して。犬のグルーミングにエサやり、自分のご飯を作って食べて、とやるべきことをすべてこなすと、10時にはスタッフが出勤してきます。夕方まで仕事して、ご飯食べて、夜10時にはだいたい寝ていますね」
東京で暮らしていた頃と一番変わったのは、規則正しい生活で健康になったことだ。
「東京に子どもたちがいて、奥さんが行ったり来たりしているので、基本的に私は朝、昼、晩、自炊。仕事の合間に仕込みをパパッとしてしまうんです。
ラジオのリモート収録前に材料を仕込んで、終わったらすぐに調理して晩ご飯完成、とかね。一日を余すところなく使っているという充実感が、本当に心地いい。
『一日のリズムを整える』と、心身ともに健康になるという実感はありますね。女性はいつまでも美しくいたいと思うでしょう。それなら早く寝て、ちゃんと食べる、そのリズムを作ることです。
食事作りを面倒に思う人もいるようですが、自分で作るご飯なんて、ご馳走じゃなくたっていいんですよ。私なんて食いしん坊だから、朝から『今日は何食べよう?』と思うと楽しくて仕方ない。そう思えることが健康の証しでしょうね」
5.自分の体を優しく労る。
自分を健やかに整えるには、「自分の体を優しく労る」ことが欠かせない。そのために大事なのは“手”だという。
「お風呂で体を洗うとき、ボディタオルなどを使う方が多いと思いますが、ぜひ素手で自分に触れてみてください。理由は2つ。
まず、しこりなどに気づきやすく、健康管理に役立ちます。そして、触れることで自分を優しく労る意識が高まります。
例えばお店で野菜を買うとき、手で触れて念入りに見るでしょう。新鮮かな、どうかなって。同じように自分の体をすみずみまで触れて、『今日は肌がすべすべだ』『なんだかハリがない』とか、気づいてあげなくちゃ。すると睡眠や食事の取り方も意識が変わってくるはずです。野菜が足りないな、ビタミンが必要だ、とね。
そしてなるべく良いものを食べることが大事。良いものとは高級という意味ではなく、無農薬野菜など安心、安全で、良質な食材のこと。どうやって作られたのかを吟味したり、栄養のバランスを考えたりしていれば、それ以外のことを無駄に悩んでいるヒマなんかなくなります。今日、何を食べるか考えるだけで精いっぱいになりますから。
そうやって日々、生きていたら心も健康になります。それが自分の体を優しく労ることではないでしょうか」
6.生き物や自然との共生。
「最近、苦手だった虫が少しずつ好きになってきました。蜘蛛が一晩で、立派な蜘蛛の巣を作るのを見たら、働き者だなって感心しちゃって。散歩から帰ってきて、蜘蛛の巣が顔にかかっても、『ゴール!』ってテープを切る気持ちで楽しんでいます」
東京生まれ、東京育ちからの熱海暮らしで、「生き物や自然との共生」の大切さを改めて強く感じたという。
「人間も動物です。でも都会のなかだけにいるとその感覚がだんだん抜けていくというか、忘れると思うんです。でもそれはちょっと危ないよ、と。
人間だって自然の一部だし、自然に生かされている動物であることは忘れちゃいけない。だから自然と共生する暮らしを大事にしようよ、と思うのです。
私たちは動物ですが、文化を持つ動物です。部屋に花を飾ったり、インテリアに色を取り入れたりするのは、さまざまなもののパワーを借りて、文化のある暮らしをすることなんですよね。
古民家はあちこちに自然素材が使われていますが、手入れしていると木の柱も生きていると感じます。それに毎日の掃除ってけっこういい運動になるんですよ。掃除は家のためでもあるけれど、自分もエクササイズさせてもらっている。感謝ですね」
7.いい意味でわがままに。
家族のために家事をするのはモチベーションになるが、一方で重荷にも。ぬぐえない自己犠牲感はどうしたら?
「良い母、良い妻でいるためにする家事は、厳しいようですが、相手のためではなく自分のためです。相手に文句を言われたとき、『私はちゃんとやっている』と言うための自己防衛では?
言い換えれば、意地でしょうか。愛情がいつのまにか意地や自己防衛になったら寂しいでしょう。そこから亀裂が生まれるかもしれません」
では自分の気持ちを、どう整えたらいいのだろうか。
「世の女性たちはもっといい意味でわがままになったらいいと思う。家族が、じゃなくて自分が食べたい料理を作ればいいんです。
例えば子どもも同じものが好きかどうかはわかりませんが、お母さんが『今日はコレよ!』ってドンと出して、おいしそうに食べ始めたら、みんなつられて食べますよ。
自分が食べたいものはおいしく作れますし、作るときも楽しくてウキウキするでしょう? お母さんが幸せなのが、一番家族のためになるんです。何より笑顔が増えます。
部屋も好みのインテリアにしたらいい。好きな空間にしたい、きれいに保ちたいと思えば、掃除だってイヤじゃなくなりますよ」
8.光と風と音。
気持ちのいい家にするために意識したいのは光と風と音。古民家暮らしから学んだ自然界と家、住む人の調和だ。
「古民家は、自然界とうまく合うように考えて建てられています。日が入る方向に窓があり、窓を開ければ気持ちのいい風が家のなかを通る。屋根に当たる雨音や、窓に面した庭からは鳥の声が聞こえます。そんな自然の音にはすごく癒やされます。
いい家にしたければ『光と風と音』、それらにこだわることです。もちろん都会のマンションなどでは、田舎の古民家のようにはいかないでしょうが、できることはあります。
先ほどもお話ししたように、インテリアの色にこだわるのもひとつの方法。光が入らず暗いなら、明るい色の布や家具にするとかね。こまめに窓を開けて風も通しましょう。
音に関しては、音楽を利用してください。とくに掃除のときに音楽を流すと、音とともに家じゅうに良い気が流れます。ぜひやってみて。ただ歌詞があるとその言霊(ことだま)の影響を受けてしまうので、なるべくクラシックや歌詞のないインストゥルメンタルがいいですね。
とくに家族の誰かが体調を崩していたり、調子が悪いと感じたりするときは家のなかのムードが明るくなるよう、光と風と音にこだわってみてください」
9.自分に合う暮らしを想像。
幸せな暮らし、幸せな生き方は、どうしたらできるのだろうか。
「人によって何が幸せかは違います。まず、自分がどうしているのが一番幸せで心地いいのかと、問いかけてください。そしてその心地よさが実現できるような、自分に合う暮らしを具体的に想像するんです。
例えば自然のなかで過ごすのが心地いい人にとっては、田舎暮らしが選択肢に挙がるでしょう。どこに住むのか、お金はどのくらいかかるか。そこまで考えれば計画を立てられます。
私は熱海への完全移住を果たすのに、仕事の整理などで10年かかりました。そこまでの長期スパンでなくとも、5年後にどうなっていたら幸せかと考えたら、今、何を準備すればいいか、明確に見えてくるはずです。
でも意外と自分の幸せって、答えられませんよ。例えば、家族が健康でいてくれることが幸せだという人は多いですが、それは自分のことじゃありませんよね。誰かがいて成り立つ幸せは、依存だし、もろいものです。
自分が何をしていたら満たされ、どうしたら幸せに暮らせるのか。自分に合う暮らし方は何かをとことん問いかけてみてください。私は何げない日常が幸せです。だから掃除して、ご飯作って、食べて、という今が本当に幸せです」
『クロワッサン』1060号より