IKKOさんが人との付き合いで最も大切にしていること。
撮影・宮崎貢司 着付け・森合里恵 メイク・高場祐子 文・一澤ひらり
“礼儀と挨拶、思いやり。 そこに心を尽くします。”
バラエティ番組や情報番組でも活躍する美容家のIKKOさん。公私の別なく、人とのつき合い方で最も大切にしているのは礼儀。
「礼を尽くすために、相手の目を見てちゃんとご挨拶して、ほんの気持ちを添えた差し入れと墨でしたためた手紙をお渡ししているんです」
毎日、何時間もかけて共演者やスタッフに礼状を書く。この姿勢を貫き通すことこそがIKKOさんの心意気。
「人に何かを口で伝えるって難しい。言えば言うほど伝わらないこともあるでしょ。でも文字には魂を込めることができるんですよね」
40歳を過ぎてから独学で書を始め、50歳になってからは書道家に師事して、基礎から本格的に学んできた。
「手紙で心を伝えたいんです。この時季なら『九重葛(ここのえかずら)』 『蓮華の色』といった言葉を頭語にして大きめに書いてから、季節のご挨拶や感謝の気持ちを綴ります。ことにコロナ禍の時代で円滑なコミュニケーションが難しくなってきたから、礼儀と挨拶はますます大事ね」
“笑顔を咲かせて、人生を美しく。”
IKKOさんにとって、人間関係には3段階があるという。1つめは挨拶程度の関係、次に気持ちよくおつき合いをしたい人との関係、最後は絆を深め、分かち合っていきたい人との関係。
「コミュニケーションって、人間関係の区分けを見極めていくことが必要ですね。いまは情が薄くなってきているから、人づき合いが面倒くさいとか、深く関わりたくないっていう感覚も強いでしょ。相手が求めてもいないのに、踏み込みすぎてはいけないって思うの」
相手に期待しすぎるのもよくない。なぜなら相手を変えることはできないから。ならば、どうすれば?
「自分で努力するしかないですね。自分が少し無理すれば円滑に回ることもあるじゃない? でも苦しくならない程度にすることが大切よ。そのちょっとした1ミリの思いやりが、素晴らしい対人関係を生むことになりますから」
自分が常に余裕を持っていればこそ、人と寛容に接することができる。
「息苦しい時代だから、人に伝えるときはできるだけやさしく、穏やかに、って思います。私ね、40代までは自分がきれいになることしか頭になかった。でも50代になって、人生を丁寧に生きたいと思うようになりました。だから必要最低限のものだけを残して、徹底的に整理もしたんです。美しくあるために大切なのは、幸せであることね
一日に1つでも幸せを感じる時間を作ることは、人とのコミュニケーションにもきっと反映するはず。
「誰だって、やさしくて幸福感にあふれている人のそばにいたいですよね。人生の景色は移り変わるけれど、その時々の景色を素敵にしていくことが、幸せでいられる手立てのような気がします。みなさんの人生に愛を込めて」
〜ここが素敵なんです。〜
●栗原幸子さん(IKKOさんのマネージャー)
韓国コスメ「サイムダンプレミアム」のプロデュースをしており、番組で商品を販売する際、お客さまにとっていかにわかりやすい言葉で伝えるか、を何より大切にしています。
また、出演番組の打ち合わせなどは、必ず直接お会いします。
それは、意図がきちんと伝わっているかどうかを、相手の方の目を見て確認したいという姿勢からです。
今までも伝え方に関しては、自身はもちろん、私たちにも厳しいですが、たくさんの経験を経てより一層進化し、どんどん言葉が洗練されているように感じます。
だから、本人が発信する言葉は、いろいろな方の心に刺さるのだと思います。
●西村眞澄さん(IKKOさんのスタイリスト)
先生は仕事では厳しいし、決して妥協されません。でも、スタッフが先生の思いと違うことをして注意をしても、そのままにはしないんです。
先生は相手がきちんと納得するまで教えてくださるし、時間がなかった場合には後で「あの時はこうだった」とフォローしてくださる。しかも、本人の目をきちんと見て話をされます。その真摯な思いが伝わってくるから、私たちも同じ失敗はしないようにするし、成長の機会を与えられます。
普通なら面倒くさいからと、注意しても意味までは伝えないことがほとんどですが、先生は違います。スタッフへの深い愛情と信頼を感じます。
『クロワッサン』1050号より
広告