くらし

長野在住、横山タカ子さんが手本。食べて健康になる、上質な食事。

  • 撮影・小林キユウ 文・芳沢祐子

原材料の豆から芽が出るような、そんな本物の調味料を。

一汁四菜を基本としつつ、横山さんの食事にはいくつかのルールがある。

「まずはじめに、動物性たんぱく質は1食60g、必ず食べると決めています。何歳になっても、筋肉の材料となる動物性たんぱく質は大切です」

60g×3食で一日180g。これでだいたい、大人が一日に必要なたんぱく質の量を補えるそうだ。

「毎食きちんと量って料理しますが、たとえば、卵ひとつもだいたい60g。朝は卵、昼と夜に魚か肉を。後はすべて野菜でお腹を満たすんです」

横山さんの一汁四菜の野菜の多さは、先にも述べたとおり。時に一食で600gを摂取できるほどだ。

「信州は野菜の消費量が日本一。それが長寿を支えているのでしょう。味噌汁を具だくさんにしたり、肉を野菜で巻いてボリューム感を出したり、毎食漬物を食べたり。工夫次第ですよ」

野菜は特別に新鮮なものを求めて、車で30分の市場まで買い付けにいくという。しかし、横山さんのこだわりは食材だけにとどまらない。

「美腸が大事と言いましたが、それを叶えるには調味料にも気をつけないといけません。塩、砂糖、酢、みりん、油などの基本の調味料に、私は最大のこだわりがあります」

化学調味料や余計な添加物の入っているものは使わない。

「醤油は大豆、小麦、塩など、素性のわかる原材料だけで作られたもの。米酢は米だけで、アルコールが添加されていないもの。料理酒は純米酒がおすすめ。みりんは“みりん風”でなく本醸造。砂糖や塩は精製されていないもの。油は混じり気のないもの。どれも原材料から芽が出てくるような、正しい作り方をしている本物を使います」

奥左から、「九鬼ヤマシチ純正胡麻油」 340g 640円(九鬼産業 TEL.0120-50-1158) 「菜種油」 660g 1,852円(安曇野スイス村ハイジの里 TEL.0263-87-0812) 「福来純 純米料理酒」 1.8L 1,650円(白扇酒造 TEL.0120-873-976) 「丸島純正醤油」 1.8L 1,170円(丸島醤油 TEL.0879-82-2101) 「福来純 伝統製法 熟成本みりん」 1.8L 2,500円(白扇酒造) 「国産有機 純米酢」 1.8L 1,360円(純正食品マルシマ TEL.0848・20・2506) 手前左から、「喜界島 ザラメ糖」 500g 200円(松村 TEL.0997-65-0156) 「藻塩」 300g 1,060円(中浜観光物産 TEL.0254-77-2714) 「塩無添加 健康たべる小魚」 50g オープン価格(サカモト TEL.052-794-4141)

今、身近に置いている調味料は、30年かけて厳選してきたものばかり。

「私が料理に使うのは、ほぼ基本の調味料だけ。だしも天然素材のみ。食材の味を生かすため、ワンプロセスで作るからこそ、調味料の質にこだわりたい。自然のものには自然のものを合わせるのが一番」

たとえば、横山さんの食卓に欠かせない漬物にも、その極意が表れている。漬物といえば、ぬか漬けなど手間がかかると思いがちだが、違う。
野菜を塩で漬けただけの「塩漬け」。それをさらに酒粕に一晩漬けた「粕漬け」。ぬかをさらし袋に入れて塩漬け野菜にのせ1時間ほど置く「簡単ぬか漬け」。今回紹介する「赤かぶの酢漬け」も、赤かぶを酢と砂糖と塩を混ぜた液に一晩漬けるだけ。
驚くほどシンプル。なのに、深い味わいの極上のおいしさがある。

「信州の保存食といえば、漬物です。野沢菜漬け、たくあん、すんき漬け。うちでは野沢菜漬けやたくあんのほか、ぬか漬け、粕漬け、鉄砲漬け、奈良漬など、たくさん漬けていて“漬物小屋”があるくらい(笑)。古漬けからインスタントに近いような浅漬けと、油のいらない発酵しているサラダという感覚で、毎食いただきます」

聞けば聞くほど、横山さんの一汁四菜は実践の難しい理想論などではなく、一歩踏み出せば誰もができる、健康的な食生活なのだと感じる。

「できることから始めてみてください。大変になってはダメ。楽しく、おいしく食べることが一番の健康法です。また、今は旬を見失いがちですが、栄養価の高い旬のものをまんべんなく食べることも、一汁四菜のルール。本当に上質なごはんは、家でしか食べられません。家の中くらい、心から安心できるものを食べたいじゃありませんか」

果物が余ったら果実酒に。「35度の本格焼酎を使って、無糖で漬けます」

漬物は、油のいらない野菜サラダとして いただきます。

 ●赤かぶの酢漬け 

【材料】(4人分)
赤かぶ500g
酢90ml
砂糖50g
塩18g

【作り方】
赤かぶは4つに切って、酢、砂糖、塩を混ぜた液に一晩漬ける。

*2週間くらいおいしく食べられる。

漬物は食事やお茶請けに欠かせない。「ひとつの野菜でいろいろな味を楽しみます」

 ●野菜の粕漬け 

【材料】(作りやすい分量)
酒粕(練り粕)400g
砂糖100g
塩漬け野菜(2%の塩で漬けた野菜。写真は、はやと瓜、紅しぐれ大根、にんじん)150~200g

【作り方】
1.酒粕に砂糖を加え(砂糖の分量は好みで減らしてもよい)、しっかり混ぜてなめらかな粕床を作る。
2.容器(できれば陶器かホウロウ)の底に1の酒粕を敷き詰めて野菜を並べ、野菜が隠れるように上に酒粕を塗って漬ける。

*一晩~5日間、おいしく食べられる。粕床は5~6回使える。

肉も魚も1食60g。年をとってもこれを続けましょう。

 ●根菜と昆布の煮物 

【材料】(4人分)
野菜(大根、にんじん、ごぼう、里芋)600g
こんにゃく1枚
干ししいたけ5枚
刻み昆布(細切り)30g
水400ml
煮干し10g
砂糖大さじ1
みりん大さじ1
醤油大さじ3

【作り方】
1.大根は1cm厚さのいちょう切り、にんじんは8mm厚さの輪切り、ごぼうは斜め切り、里芋は5分蒸して皮を剥き乱切り、こんにゃくは茹でて表面に切り込みを入れて一口大の角切り、干ししいたけは戻して半分に切る。
2.鍋に1、分量の水、煮干しを入れ、野菜が柔らかくなるまで煮る。
3.砂糖、みりん、醤油を入れ、刻み昆布は水洗いし、2の上にのせて味を煮含める。大根がほっくりとし、醤油色になるくらいが目安。

 ●豚肉の白菜巻き 

【材料】(4人分)
豚肩ロース薄切り肉250g
白菜6枚
ポン酢醤油適量

【作り方】
1.3枚の白菜に豚肉を広げてのせる。
2.その上に白菜を1枚ずつのせる。その際、葉先と根元が互い違いになるように。
3.肉をはさんだ状態の白菜を、手前からしっかりと巻き、蒸気の上がった蒸し器で12分蒸す。
4.粗熱が取れたら、食べやすい大きさに切り、ポン酢醤油などをつけていただく。

※白菜は多少巻きにくくても、蒸しあがりでぎゅっと形を整えるとよい。

横山タカ子

横山タカ子 さん (よこやま・たかこ)

料理研究家

長野県生まれ、長野市在住。保存食を中心に長野の郷土料理を研究。著書は『健康おかず 作りおき』(主婦と生活社)、『信州 四季暮らし』(扶桑社)など多数。

『クロワッサン』1039号より

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