百万石の加賀前田家が守り育てた日本の美。 大東駿介さん、菅井友香さんが、東京国立博物館でその美意識を堪能
文・クロワッサン編集部
会場に入って出迎えてくれるのは、加賀前田家の初代・前田利家(1538-99)が着用していたとされる煌びやかな金の甲冑「金小札白糸素懸威胴丸具足」。そびえるような金の烏帽子が印象的だ。
大東さんは「甲冑でこうして威厳、自分の存在を表現するという点で、武具には意味があったんだと感じます。金ピカですから。戦場にいたら威圧感がすごいでしょうね」
菅井さんも「とても目立つでしょうね。先陣を切っていく利家の強さと覚悟を感じます。周りからの信頼もとても厚かったことでしょう。それを送り出すまつの思いもとても大きかったことと思います」
そのすぐ傍らにあるのは、まつが刺繍をしたと伝えられる利家の陣羽織「重要文化財 陣羽織 淡茶縬地菊鍾馗図(じんばおり あわちゃつむじぎくしょうきず)」(前田利家所用 安土桃山時代・16世紀 前田育徳会蔵)。
菅井さんは「とても細やかな刺繍。大変な時間をかけて縫われたのだと思いました。一針一針に利家への思い、無事に帰ってきてほしいという思いが込められていると思うと、胸が熱くなりました。利家もそれをお守りのように羽織っていたのだろうと思います」。
大東さんも「陣羽織って、戦いにおいてとても意味のあるものですから。背中全面への刺繍はすごい。器用な方だったんだなと思います」
以下、『クロワッサン』の取材に応じてくれた大東さんと菅井さんの言葉から。
――大東さんは現在、大河ドラマの中で前田利家の人生を生きておられます。今回、利家にゆかりのさまざまな展示物を見て、どのような感想を持ちますか?
大東駿介さん(以下、大東) いま僕が前田利家を演じているご縁で、今回のアンバサダーのお話をいただきました。やはり利家の展示物にはとても思い入れがあり興味深いです。当時、利家がどういう生き方をしていたかが見えてきますし、歴代当主の甲冑が並んでいる様子は、前田家の皆さんによって繋がれてきた芸術の姿でもあります。そう考えると、見えてくる景色がある。前田家がどう時代を見てきたかというその一本筋から、新しく見えるものがあるなと思います。
利家を祖とする前田家が芸術文化を大切にしていたことは、自分の想像以上でした。ただの収集ではなく、収集した数々のものに対して自分たちがどう向き合うかという誠意を感じる。そこに美意識が間違いなくある。例えば、収集したものをどういう箱に納めるかということを前田家の人々は考えて、その収蔵品と対になるような素晴らしいものを製作しているんです。収蔵品に対する敬意ですよね。文化に対して文化で向き合う、そのことが本当に魅力的で、圧観でした。
自分は俳優という仕事をしているので、日常的に感度を高くして生きているつもりなのですが、今回の展覧会では、今の感度ではなかなか辿り着けないものを感じる。それが会場内を歩いて行くと、見えてくるものがあるんです。進むにつれて解像度がどんどん上がっていく感じです。
――それは何かインスピレーションが降りてくるような、でしょうか?
大東 降りてくるというよりは、この文化、美しさというものを、視覚で捉えるだけではなく感性、感覚として受け取ったという感じでしょうか。辿り着く先は宇宙なのかな?と思えたくらいです。 特に茶の湯に関する展示のコーナーでは強くそれを感じました。宇宙的であるというか、何か真理に辿り着く道筋が見えるような……。大変興味深い経験でした。
――菅井さんはいかがでしょうか? 大河ドラマで利家の妻・まつを演じておられますが、展示を観て「我が殿、すてき!」という気持ちになられたのではないでしょうか。
菅井友香さん(以下、菅井) やはり今回の展覧会の目玉のひとつの金の甲冑は、本当にきらびやかで、利家の強さ華やかさ、そして先頭に立ち戦う覚悟というものを感じて、素晴らしいなと思いました。そんな旦那さまを支えるまつは、誇らしさと、そしてそのぶん心配もたくさんあったのだろう、気苦労も絶えなかったのでは……と感じます。
――この金烏帽子を被る、大東さん演じる利家をイメージできましたか?
菅井 はい、イメージできました。そしてまつが縫ったと言われている陣羽織にも、思いの深さを感じました。他にも代々の前田家当主の皆さまの甲冑や陣羽織も、代々それぞれのカラーがあり、皆さまがそれぞれの感性と方法で前田家を守られてきたんだな、ということを強く感じました。それがこうして一堂に並ぶ様子を観られることは、とても贅沢なことだと思います。
――今も大河ドラマの撮影が続いていることと思いますが、今回の展覧会が演技プランに活きますか?
大東 今はドラマの中では武闘派で硬派な雰囲気で描かれていますけれど、利家について史実を調べて行くと、意外とお金勘定をきっちりしていたりするんです。今回の展示にも利家が愛用していた小さなそろばんがありますし、視界の広さをすごく感じますね。そろばんは絶対、ドラマのどこかのシーンで使いたいなと思います。
菅井 寧々さん(浜辺美波さん演じる豊臣秀吉の妻)との言い合いの場面がしばしばありまして。
―あのシーンは面白いですね。
菅井 はい、とても面白いんです。ドラマを観て下さっている方がちょっと一息つけるような、楽しめるポイントになればいいなと思っています。今回の展示にも、まつが出家して芳春院となってからの寧々との交流を書いた手紙もありますし。将来的にまつは芳春院として、誰かの力になれるようにと生きていくことが視野にあるので、大切な人のために誠心誠意動いていく姿や、心の強さをしっかり表現できたらと思います。
――お二人が今演じられている利家とまつが、今回の展示で観られるような19代続く前田家を作ったことに対して、思うところ、身の引き締まるような気持ちはありますか?
大東 利家という初代当主の頃から、こういう芸術文化を繋いでいこうという思いがあったんじゃないかと思うんです。前田家を繋いできたもの、リーダーとして利家が引っ張ってきたものが今回感じられて面白かった。これからそれをイメージしながら演じたいなと思います。
菅井 今回の展示を通じてこれだけの美意識、芸術作品に対する思いに触れられ、改めて日本の宝だと思います。前田家の皆さまが成し遂げられていることは本当に素晴らしいので、まつを演じることに、身の引き締まる思いを感じました。
大東 我々は前田家側の視点でこれを観られるというのがありがたいよね。
菅井 本当に、すごいですよね。
大東 この出会いに感謝します。
開催概要・前田育徳会創立百周年記念 特別展「百万石!加賀前田家」
観覧料金・一般2,300円ほか
開催中〜2026年6月7日(日)途中で展示替えあり
月曜休館(4/27、5/4は開館)
問い合わせ・050-5541-8600(ハローダイヤル)
公式サイト・https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kagamaedake2026/
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