くらし

ホラーの生成。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

高校時代、理科の授業でカエルの解剖があると聞き、とても楽しみにしていたのだけれど、たまたま地方の大学受験と重なってしまい、解剖に参加することができなかった。40代に突入し、自身に婦人科系の腫瘍が見つかった時、お医者さんは取らなくてもいいよ、と言ってくれたのだけど、カエルの解剖に参加できなかった無念を自身の手術という経験で補おうと、手術を志願。主治医の先生は私の気持ちを理解してくれて、術後、私の内視鏡手術のビデオを丁寧に説明しながら見せるレクチャーをやってくれた。

その数年後、鹿の解体を見に行った。毎日獲れるわけではないので、無駄足も覚悟していたけれど、猟師さんから獲れたことを知らされた時は、胸が高鳴った。

私たちは、肉を食べるけれど、食される動物達の解体を見ることはなかなかない。映画などで、動物が無残に殺され血が流れるシーンなどは、私自身、目を背けることもあった。だからホラー映画を見るような気分になるのかと想像していたけれど、猟師さんたちの素早い解体はとても鮮やかで、皮膚の下から出てくる内臓も本当に瑞々しく美しかった。映像がホラーと化すのは、無駄に血が飛び散り、目的が不明瞭な上、音楽やカメラワークが大きな働きをしているのだろう。そういったイメージが蓄積されて、私達自身も持っている内臓などのイメージは「気持ち悪い」ものだと、多くの人が思っている。けれど、内視鏡の映像に映った私の内臓も、さっきまで山を走り回っていた鹿の内臓も「気持ち悪い」とは程遠く、キラキラしていた。

そんなキラキラしたものを食す私たちがホラーの一部にならないためには、多くの動物を無駄に殺し、食料廃棄を出すようなことがないようにすべきなのだ。食されることが果たされず、結果、殺した理由が不明瞭となり、ただの死体と化してしまったとき、人間は動物の無念を読み取り、ホラー(恐怖)を生成することになる。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は、https://www.facebook.com/imostudio.imo/ にて。

『クロワッサン』1025号より

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