くらし

【歌人・木下龍也の短歌組手】夏の短歌、集まっています。

第41回全国短歌大会大会賞を受賞して以降、精力的に活動を続ける歌人・木下龍也さんが読者の短歌にコメントをする連載『短歌組手』。第2弾の募集にもたくさんの短歌が集まっています。ご応募ありがとうございました。応募作の中から木下さんが選んだ短歌を数回に分けて紹介していきます。
シャツがよくお似合いの木下さん。

〈読者の短歌〉
りんご飴パキュンとかじりああこんなこんなに季節で孤立するとは
(鹿沼古湖/女性/テーマ「夏」)

〈木下さんのコメント〉
たしかに「パキュン」だ。最適な擬音語をありがとうございます。思い出の「りんご飴」はどれも、その大きな果実を細長い串に支えられ、断片的な夏の一瞬に「孤立」している。

〈読者の短歌〉
君なりのパンはパンでも食べられないパンってなーんだ?目を逸らすな
(野坂ホールディングス/女性/テーマ「パン」)

〈木下さんのコメント〉
え、急にこわい。これなぞなぞですよね?フライパ……痛っ!じゃないですよねですよね、僕なりのですもんね。えーっと、あ、パンパンですか?このまえチンジーからもらったんです。痛っ!

〈読者の短歌〉
。(句点) 君を一番前に持ってきた
どんな景色がそこから見える?
「小学生の頃、作文の授業で句読点は絶対に行頭に持ってきてはいけないという禁則処理について教えてもらいました。その時、「そうか。句読点は行頭を経験することなく一生を終えるのか」と思いました。だから、一番前に出してみました。禁則処理への小さな反抗です。行末で暮らしていた時とは違う景色が広がってるといいな。」
(納豆亭小粒/女性/自由詠)

〈木下さんのコメント〉
句点「ちょっとさむい」

〈読者の短歌〉
誤変換により生まれし蒼井羽美、永井保美に憧れて、夏
(松島夕里/男性/テーマ「夏」)

〈木下さんのコメント〉
このふたりはいつも画面越しのように遠い存在だ。「蒼井羽美」(あおいうみ)は生命の始まりを、「永井保美」(ながいやすみ)は生命の終わりを想起させる。正しく変換されてゆく日々をやり過ごしながら我々は「戸羽野亜衣」(とわのあい)を探し続けるしかないのであろう。←スベりました。

〈読者の短歌〉
父さんがパンを作ると言ったから急いで帰ったのに蒸しパン
(おうい/女性/テーマ「パン」)

〈木下さんのコメント〉
だれも悪くないのに全員落ち込むやつ。「え?蒸しパンなの?」と言われた父さんも、「え?蒸しパンなの?」が聞こえた蒸しパンも、こんがりと焼きあがるパンを想像していた私も。

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