松本幸四郎と尾上松也が魅力たっぷりに演じる〈究極の悪〉。今年の観劇納めは新橋演舞場でいかが?
撮影・文:クロワッサンオンライン編集部
「今年いちばんの刺激になりますよ」と幸四郎さん。
『朧の森に棲む鬼』は、シェイクスピアの名作『リチャード三世』を下敷きに、日本の『酒呑童子伝説』をモチーフにした嘘と欲望に支配される男の栄光と破滅の物語。松竹と劇団☆新感線がタッグを組み、2007年に初演された演目です。今回は主人公のライとエイアン国の武将のサダミツを、初演でライを演じた松本幸四郎さんと尾上松也さんがダブルキャストで上演します。出演は他に、ライの弟分キンタに尾上右近さん、オーエ国の党首・シュテンに市川染五郎さん、検非違使の長である男装の麗人・ツナに中村時蔵さん、エイアン国の国王に坂東彌十郎さん、その愛人・シキブに坂東新悟さんなど、豪華な歌舞伎俳優陣が勢揃い。
先日、主要俳優陣による取材会が開かれたのでお話を聞いてきました。
最初に挨拶をしたのは幸四郎さん。「とにかく刺激的なお芝居になっております。今年一番の刺激を受けに、劇場に足を運んでいただければ」
それを受けて松也さん「憧れていた『朧の森に棲む鬼』のライを、幸四郎さんと一緒に勤めさせていただくことは本当にうれしい限り。全力を尽くしますので、ぜひ熱気を感じに来ていただきたい」。今回稽古を一緒にするなかで「やっぱりかっこいい…本物のライがいる…」と感じながら臨んだ、とも語る。
取材時に中央の2列目に立っていた右近さんは、前列の幸四郎さん・松也さんの冠で、顔が隠れがちな状態に。それを2人から無言で圧をかけられてますます見えない。
「ちょっと被りぎみなんですけど…」と声を上げると、一層前に迫るふたり。その様子に会場に笑いが起こり、稽古場の雰囲気の良さを感じさせた。
その右近さん「このキンタの役は、阿部サダヲさんが劇団☆新感線で演じておられた大好きな役。新感線を初めて知ったのもこの作品。今回阿部さんも観にきてくださるそうで、憧れの役を一生懸命勤めたい」と語った。
染五郎さんは、10代最後の出演になる気持ちを聞かれ、「あまり年齢は意識していないのですが、作品との出会いや人との出会いを大切にしたいという気持ちがあります。そういう意味では今の年齢でないと、このシュテンというお役に出会えなかったかもしれない。そのことには、ありがとうございます、という気持ち」
彌十郎さんは「私は自分をまだまだ若手だと思っていましたが、今回の稽古を拝見していると、本当に皆さん若くて元気。立ち回りができないことが寂しいと思っていましたが、なくてよかったと思っています。今回は9年ぶり、第2段の歌舞伎NEXTなので、第3弾、第4弾と出られるように体力作りを頑張ります。また呼んでいただきたいですからね!」とにっこり。
「歌舞伎とはたいへん間口の広いもの。今回の作品も今は歌舞伎NEXTと銘打たれていますが、何十年後には古典と呼ばれるかもしれない。『何十年も前にもこの芝居を観たな、あの頃はNEXTとか呼ばれてたな』と思えるように、この先何度も観ていただけたらいいなと思いますね」
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