くらし

先生の仕事。│ 束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

私は小学高学年頃から高校卒業まで、成績が悪いというだけでなく、素行の悪さもあり、先生に呼び出された経験が何度もある。いわゆる不良ではなく、目立たない存在でありながら中途半端に反抗的で、尖がったところがあり、分類しにくい生徒だったと思う。

担任になった先生は、そんな私に何かしら声を掛けてくれた。その中でも、数人の先生からはとても大きな愛情を与えていただいたと、今思う。
当時はその愛情には気づくことができず、持ちうる全ての力を使って私なりに反抗していた。思春期は、反抗することが成長の重要な過程ではあるが、狭い世界しか知らない私のような学生は、不満や憤りが、世界が狭いことからきているということに気がつかない。世界は皆、共通だと思い込み、隣にいる同級生も同じ世界を見ているのだと信じていた。

私がその時見ていた学校空間の外側にも世界が広がっていることに気づくのは、そこに一歩足を踏み出した時だ。愛情を持って接してくれる先生方は、執着気味に学校の内側にしか目を向けていなかった私に、外の世界の存在を先生なりに示唆してくれていたように思う。逆に、私にとって愛情を感じなかった先生は、学校の中で完結する世界観において、いかに先生が偉く、尊敬すべき存在か、ということを知らしめるために努力していたように感じる。きっとその先生も、年齢的には大人だったかもしれないが、私の学生時代と同じくらい見えていた世界が狭かったに違いない。

常に、今いる世界が全てではないことを知り、新しい世界を見つけることが一度でもできれば、今は目の前の状況に落胆していたとしても、想像する力で希望が満ちてくる。今思い出しても思春期はしんどい。私のように愛情ある先生に恵まれれば、何とか思春期を乗り切れる。先生方には是非、難しい時間を過ごしている子供達に、まだまだ広がる世界を感じられるような言葉を掛けてあげてほしい。そしていつか元生徒が、先生の愛情に時間を経て気づく時、当時、先生が掛けてくれた言葉のおかげで、あの頃よりもグッと広がった自分の世界に気づいていることと思う。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は、https://www.facebook.com/imostudio.imo/ にて。

『クロワッサン』1024号より

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