くらし

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』著者、村田沙耶香さんインタビュー。「小説の中でも、友情って汚せないんです」

  • 撮影・黒川ひろみ(本) 山本ヤスノリ(著者)
様々な世界と対峙する人々を描いた短編集。表題作のほか「秘密の花園」「無性教室」「変容」の全4編を収録。 KADOKAWA 1,600円
村田沙耶香(むらた・さやか)さん●1979年、千葉県生まれ。’03年『授乳』で群像新人文学賞優秀作を受賞。’09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞を、’13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞を、’16年『コンビニ人間』で芥川龍之介賞を受賞。

芥川賞を受賞した『コンビニ人間』は世界30カ国で翻訳された。約8年の間に書きためたという村田沙耶香さんの短編集は、目が覚めるようなタイトル。表題作「丸の内魔法少女ミラクリーナ」は文芸誌『小説野性時代』の「ヒーロー特集」のために寄稿した作品。

「どんなヒーローでもよい、ということで書かせてもらったんです。大人になっても子どもの遊びをしている人、たとえば変身ベルトを今もつけている大人がいるとする。でも、異物として見なされたりバカにされてしまうのではなく、それを続けること、つまり妄想の力で現実と折り合いをつけている様子を描きたかったんだと思います」

主人公のOL・茅ヶ崎リナは36歳になった今でもバッグの中に魔法のコンパクトを忍ばせている。定時の10分前に頼まれた仕事でも猛烈な速さで仕上げる理由は、世界の平和を守る魔法少女だからだ。リナ、またの名を「ミラクリーナ」は、かつて同じく魔法少女だった親友のレイコの恋人・正志に不満を持っている。仕事のストレスの捌け口として虐げられるレイコを守るべく、リナが正志に放ったひと言は、「じゃあ、魔法少女になりなさいよ」であった。

親友の彼氏がすごくイヤな人 というとき、ないですか?

「正志のことは、書いている時から嫌いというか。親友の彼氏がすごくイヤな人のとき、ないですか?(笑) ただ、そんなに強く“別れなよ”って言えない。だって私が親友と付き合えるわけではないし。ということが人生に何度もあって、その時の気持ちが込められています」

レイコの彼氏であり続けたいために魔法少女となった正志は、リナと共に東京駅構内のパトロールを始める。正志が元気になっていくのに対し、疲れ切っていくリナ。

「書きながら、自分は友情ってものを大事にしているんだなと。小説の中でも友情みたいなものをあまり汚せないというか、変なふうに書けないんですよ。友だちって、利害関係がないのに一生懸命になれたりとか、自分もそれに救われてきた経験があって」

村田さんが小説を書くのは自宅ではない。お昼に用事を済ませたあと、喫茶店やファミレスを巡って執筆。出版社への「通いカンヅメ」もよくする。編集部内のブースを借りて夜中まで執筆するのだ。ザワッとした場所で、原稿は進む。

「私は意識の部分では全然大したことを考えていなくて。無意識の部分を使わないと、ちゃんと物語を完成できない。書くことで思いがけない展開やセリフが出てきた時は、ちょっと人間の核心にあるものに近づけた気がします。全く完全に知ることはできないと思うのですが、でも知りたいから書く。それが、私が書く動機です」

この日着ていたのは注目のブランド『mame(マメ)』の洒落たワンピース。作家の視点で選んだ一枚だ。

「こういう発想で作りました、という物語性に弱くて。それを聞いてしまうと服でもアクセサリーでも香水でも、つい買ってしまいます」

『クロワッサン』1020号より

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