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ものは輸入できても、生活文化は輸入できない――白石勝彦(インテリア・デザイナー)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、インテリア・デザイナーの言葉に、快適な暮らしを考えるヒントを探ります。

文・澁川祐子

1979年1月10日号「よい家具を発見する"眼の訓練”を始めよう」より
1979年1月10日号「よい家具を発見する"眼の訓練”を始めよう」より

ものは輸入できても、生活文化は輸入できない――白石勝彦(インテリア・デザイナー)

<快適な部屋で気分よく暮したいのなら、よい家具を置くのが手っ取り早い>。そんな文句からはじまる、自分の生活にあった家具選びを考える巻頭特集。

バウハウスデザインの椅子に惚れ込んで、和室を洋室に改造した人。中古家具の手直しからはじまって、自作のテーブルまでつくった人。読者のこだわりの家具が披露されたあとに、3人のインテリア・デザイナーが登場し、おすすめの家具を具体的に示しています。

そのうちの1人、白石勝彦さん(1926-2010)は、<人間の手が実際にかかわったもの>を選ぶように指南。理由は、量産品だと<使う側の便利さより作る側のシムテムが優先されちゃう>から。

そこでおすすめしているのが、座面と背が革で編み込まれた、イタリア家具「アルフレックス」の「NT」チェアや、デンマークのデザイナーであるハンス・ウェグナー作品など。いずれも、現代まで名作と呼び声の高い椅子を挙げています。

しかしそんな名作の椅子も、もとは靴をはいたまま座ることを想定してつくられたもの。もし高くて座り心地が悪いと感じたら<足を切っちまえばいい>と、なんとも大胆な発言が飛びだします。

でも考えてみれば、靴を脱いでくつろぐという日本に根づいている生活文化は、そう簡単には変えられないでしょう。ならば、ものをあわせるまで。そんな思い切った提言には、「快適さ」をとことん考えてきたデザイナーならではの説得力がありました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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