淀みがない。ワタナベマキさんの自宅を一言で表すとしたら、そんな言葉がぴったりだ。玄関に入ると爽やかな香りが漂い、日当たりのよいダイニングには清々しい気配が漂っている。
「空気が常に流れていることが私にとっては大事ですね。空気がどんよりしていると思った時は、玄関のドアを開けて窓からの風を通すこともあります」
今の住まいに引っ越したのは1年ほど前。広々としたテラスやその先に広がる自然もまた、心地よさを醸し出す大きな要素だ。前の家から持ってきた数々のグリーンが室内にもテラスにも置かれ、家の中と外をゆるやかにつなぐ役割を果たしている。
「植物は暮らしに欠かせません。空気がきれいになると思うし、見ているだけで気持ちいいんです」
料理の撮影や取材、打ち合わせなど、毎日のように人が出入りする家。キッチンとダイニングは、ワタナベさんの仕事場でもある。だから家族の私物は持ち込まず、それぞれの部屋に置くのがルール。毎日、来客が帰った後に10分ほどキッチンとダイニング、玄関の棚や床を拭き掃除するのも習慣だ。
「本当にざっと拭くだけですが、しないと落ち着かない。人の出入りが多い分、汚れやにおいをため込まないようにしたいんです」
思わず深呼吸したくなるような気持ちのよい空間を生み出すのは、日々のこうした積み重ねなのかもしれない。