くらし

絵本を通じて触れる進化の歴史のロマン。国立科学博物館『絵本でめぐる生命の旅』

  • 文・嶌 陽子
『せいめいのれきし』 バージニア・リー・バートン 文・絵 岩波書店 地球誕生から現在までの命のリレーについて、劇場仕立てで壮大に物語る名作絵本。初版刊行以来、半世紀ぶりの改訂版。真鍋さんが監修に携わった。

「地球に海ができました。その海の中に、あるとき、目に見えないほどのちいさな生きものがあらわれました。」(『ながいながい骨の旅』より)

こんなやさしい文章や美しい絵の数々が並ぶ本展。テーマは、地球を舞台に繰り広げられる生命の進化だ。7冊の絵本から場面をつないだ展示室は、カラフルで楽しげな雰囲気。化石やはく製などの標本とともに展示することで、生命の進化の過程を丁寧に紹介している。

「絵本には本質的なことが分かりやすく書かれていることが多い。親しみやすいツールを通じ、世代を超えて自然科学への興味を持ってもらいたいと考えました」

本展の監修を務めた国立科学博物館の真鍋真さんはそう話す。

38億年前に生まれた単細胞から続く生命の歴史。魚類から私たちヒトへとつながる約5億年間の進化の過程。恐竜の一部が進化して鳥になり、現代に生きているという事実。大きく引き伸ばされた絵本の場面を標本や解説とあわせて見ると「そうだったのか!」と驚くことばかり。

「この展覧会を見た後、同じ館内の常設展を見たくなる人もいれば、ほかの博物館へ行きたくなる人、あるいは動物を観察したくなる人もいるかもしれません。本展をきっかけに、それぞれの興味を深めてもらえたらうれしいですね」

38億年前から続く壮大な生命の物語。自分が存在していることも、その物語の一部なのだと思うと、胸を打たれずにはいられない。

「誰もが自分自身に引き寄せて考えられるテーマだと思います。私たちにつながる大きな進化の流れ。その魅力やロマンを、きっと感じられるはずです」

自然科学に関する絵本100冊以上を集めた読書コーナーも。絵も文も素晴らしい本のページをめくれば、さらなる「そうだったのか!」の連続で、思わず読みふけってしまう。親子はもちろん、大人だけでも充分に楽しめる内容。わくわくする“生命の旅”へ出かけてみよう。

『とりになった きょうりゅうのはなし 改訂版』 大島英太郎 作 福音館書店 絶滅したと思われている恐竜。その一部は鳥に姿を変えて進化を続けている……。鳥と恐竜の関係が、魅力的な絵と文でわかりやすく語られている。
『ダーウィンの「種の起源」 はじめての進化論』 サビーナ・ラデヴァ 作・絵 岩波書店 生命の「なぜ」を説明した、ダーウィンの『種の起源』。世界を大きく変えたこの本を、美しい絵と文章で語り直した。「進化論」の格好の入門書。
『わたしはみんなの おばあちゃん はじめての進化のはなし』 ジョナサン・トゥイート 文 カレン・ルイス 絵 岩波書店 大昔の魚、ほ乳類など、様々な「おばあちゃん」が子孫の私たち(ヒト)に語りかける。内容は実に深いが、平易な言葉で子どもと一緒に進化の歴史をたどれる。
展示室には絵本の絵や文とあわせて標本の展示も(上はイメージイラスト)。博物館の豊富な資料を生かし、よりイメージを膨らませられるようにしている。Illustrations (C)Eitaro Ohshima

絵本でめぐる生命の旅』
〜3月1日(日)

国立科学博物館(東京都台東区上野公園7-20)日本館1階 企画展示室、中央ホール TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル) 営業時間:9時〜17時(金・土曜は〜20時、入館は閉館時間の30分前まで) 休館日:月曜(月曜が祝日の場合は火曜、2月17日は開館) 料金・一般630円 http://www.kahaku.go.jp/

『クロワッサン』1014号より

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