これまで何度となく海外に出かけたが、お土産にお金をかけたことはほとんどない。もっとも安上がりだったのは、英国リバプールに行った時、ストロベリーフィールドの落ち葉を3枚くらい拾ってきて、糸で繋げて作った栞。原価0円。差し上げた人がビートルズ好きだったから一応喜んでくれた……はず。日本から持参した「安お土産王」は五円玉だろう。穴が空いた硬貨は海外の人に喜ばれると聞いたのだけど、実際どんな反応だったか覚えていない。と記憶をたどるうちに、おぉ、あれらはビーズだったのだ、と気づく。
2年前、大阪の国立民族学博物館で開館40周年記念特別展としてビーズ展が開催された。気になりつつも行けなくて悔やんでいたら、このたびその展示が東京にやってきた! しかも国立科学博物館で、自然科学の視点でビーズを紐解くという趣向。民博と科博の共同企画なんて、ワクワク度も2倍だ。勇んで突撃した。
天然素材のビーズに目を奪われる。木の実、貝殻、花なんてのはわかりやすいが、次第に素材はディープになっていく。ピラルクの鱗、ダチョウの卵の殻、甲虫の羽、ヤマアラシの棘、ヒトの歯(首狩りの戦利品!)。人間はいつの時代もどんな場所でも、穴をあけて糸を通してきたんだなぁ。貝のビーズは海から離れた土地で価値が高まり、オランダ人のガラスのビーズがアフリカで羊や象牙と取引された、なんて交易の話もおもしろい。世界はビーズで繫がっている。
翌日おでんを食べたのだが、ちくわが一瞬ビーズに見えた……。