稲葉俊郎さんに聞く、とっておきの美術館。

「美しい自然を発見するのではない、自然の中に美しさを発見するのだと言ったのはゴッホですが、美術館へ行くことの効用は自分にとっての美を発見することにあると思います」と話す稲葉俊郎さんの“ベストオブベスト美術館”は、瀬戸内の豊島美術館。

水滴の形をした建物は天井に丸い穴が開き、光が落ちる。床から水滴が染み出し、集まっては離れる。人の手を感じさせない、まるで自然現象のようなアートワーク。「美術館全体がひとつの作品。水の惑星、地球の歴史を感じます。一滴の水が集まって海になる。ただそのことを全身を貫かれるように体感して、ここに行った後、何度か夢に見ました」

巨大な自然が一個の作品に映し出されるといえば、横尾忠則さんの絵画もそう。「一枚の絵の中に森羅万象が塗り込められている。ここへ来ると宇宙と一対一で対峙する自分というビジョンがいつも浮かんできます」。横尾さんとは親交も深いという稲葉さん。「83歳になる今も常に変化して、進化して、枠が全くない。横尾さんの作品はあらゆる文脈を突き抜けています。そういう絵を観るだけで、すごくリフレッシュできるんです」

建築家・西沢立衛（りゅうえ）が建物、アーティスト・内藤礼が作品を手がける。瀬戸内海の島・豊島（てしま）の小高い丘の上にあり、世界中からアート好きが訪れる聖地。

●香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607　TEL.0879-68-3555　10時～17時（11月～2月は～16時）　火曜休（季節によって異なる）

［合わせて行きたい］島キッチン
豊島の野菜や魚介を使い、島のお母さんたちが腕によりをかけた料理が楽しめる。建物は民家をリノベーション。開放的なオープンテラスでイベントも。

●香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃1061　TEL.0879-68-3771　11時～16時　火〜金曜休（季節によって異なる）

「絵画、ポスター、本の装丁、森羅万象が入り組む横尾忠則（よこおただのり）の世界を堪能できます」（稲葉さん）。2020年2月1日〜5月10日『兵庫県立横尾救急病院展』を開催。

●兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30　TEL.078-855-5607　10時～18時（展覧会会期中の金・土曜～20時）　月曜休（祝日の場合は翌平日）

［合わせて行きたい］宝塚市立手塚治（てづかおさむ）虫記念館
阪急電車に乗って宝塚へ。「歌劇場で異世界に触れ、日本の漫画の土台をすべて作った手塚治虫の記念館にもぜひ足を運んでみてください」

●兵庫県宝塚市武庫川町7-65　TEL.0797-81-2970　9時30分～17時　水曜休（祝日、春・夏休み中は開館）

絵画や彫刻をはじめ、インテリア、写真など多岐にわたる作品を所蔵。「併設のカフェも太郎ワールドを満喫できておすすめです」

●神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5　TEL.044-900-9898　9時30分～17時　月曜（祝日を除く）、祝日の翌日（土・日曜を除く）休

［合わせて行きたい］生田（いくた）緑地
美術館は緑豊かな生田緑地内にある。「自然という完璧な美の世界を通り抜けていく、美術館に入るまでのプロセスもすべて芸術体験です」