「美しい自然を発見するのではない、自然の中に美しさを発見するのだと言ったのはゴッホですが、美術館へ行くことの効用は自分にとっての美を発見することにあると思います」と話す稲葉俊郎さんの“ベストオブベスト美術館”は、瀬戸内の豊島美術館。
水滴の形をした建物は天井に丸い穴が開き、光が落ちる。床から水滴が染み出し、集まっては離れる。人の手を感じさせない、まるで自然現象のようなアートワーク。「美術館全体がひとつの作品。水の惑星、地球の歴史を感じます。一滴の水が集まって海になる。ただそのことを全身を貫かれるように体感して、ここに行った後、何度か夢に見ました」
巨大な自然が一個の作品に映し出されるといえば、横尾忠則さんの絵画もそう。「一枚の絵の中に森羅万象が塗り込められている。ここへ来ると宇宙と一対一で対峙する自分というビジョンがいつも浮かんできます」。横尾さんとは親交も深いという稲葉さん。「83歳になる今も常に変化して、進化して、枠が全くない。横尾さんの作品はあらゆる文脈を突き抜けています。そういう絵を観るだけで、すごくリフレッシュできるんです」