与論島、鳥取、愛知、スペイン……発酵文化を訪ねて、国内外へ。【井澤由美子さん】
文・長谷川未緒
「先人の知恵が詰まった発酵食の良さを伝えていくことは、私のライフワークです」と料理家の井澤由美子さん。旅の目的地として選ぶのも、発酵食文化が豊かな土地だ。
「娘がプレゼントしてくれた与論島旅行では、壺で丁寧に仕込まれた、きび砂糖が原料のきび酢に惚れ込みました。酸味がやわらかくて、島の人がきび酢でお刺身を食べるのだと教えてくれました」
島根県の発酵レストランをプロデュースするため通っていた山陰地方も、発酵食の宝庫だ。
「米どころなので日本酒がおいしく、麹で漬ける発酵食が豊富。鳥取の名人女性が塩梅よく塩漬けした後、麹で熟す鯖すしは果実の香りすらします」
土地の人が名人と呼ぶには、それだけの理由がある。使う原料も選び抜いているので、麹の生産者や鯖の漁師さんまで紹介してもらえて、奥深く知ることができたという。
気軽に作り手を訪ねるなら、愛知の三河地方碧南市での、みりんの醸造所巡りを。
「『杉浦味淋』や『角谷文治郎(すみやぶんじろう)商店』など、みりんメーカーがタクシーで回れる範囲に集まっています。事前に予約すれば見学できるメーカーも。みりんの奥深さを知ることができます」
発酵を追い求める旅は、世界にも広がって……。本誌995号でともに居酒屋を訪れた料理家の藤井恵さんと、イギリス、スペインへ。
「藤井さんとは、年に数回、ハシゴ酒をする仲。タイミングが合い、今年の夏に女ふたり旅をしました」
イギリスはノッティングヒルに滞在し、美しい街並みと紅茶やクラフトビールを思う存分楽しんだ。
「市場で食べたフィッシュ&チップスが、『どう作るんだろうね』とふたりとも言うくらいおいしくて、ビールも進みました(笑)」