広島県に属する瀬戸内海の離島、大崎上島(おおさきかみじま)。イラストレーターの村上テツヤさんは、この島に1年間、家族と暮らした。
「妻の実家が広島市にあって、この辺りに時々遊びに来るうちに好きになったんです。『自然の中で子育てがしたい』と思い、数年前に思いきって移住しました。事情があって1年間で東京に戻ったんですが、本当に自然の豊かな、いいところでしたね。借りた家も裏が山で緑がいっぱい。おかげで家の中にいろいろな虫が入ってきましたけど(笑)」
広島の竹原からフェリーで30分ほど。山田洋次監督の映画『東京家族』のロケ地にもなった大崎上島は、“柑橘の島”と呼ばれるほど、柑橘類が豊富に実る。
「島じゅうにいろいろな種類のみかんの木が生えていて、我が家も毎日食べてました。ほかの果物の栽培も盛んなんです」
熊佐商店のジャムは、レモンをはじめ、島の新鮮な果物を使って手作りしたもの。
「熊佐商店さんは家の近くにあった食料や日用品のお店。野菜や豆腐などを買っていたんですが、ある日このジャムを買って食べてみたら本当においしくて。果実そのものを食べているみたいなんです。島を去る時にたくさん買って東京の友だちに贈ったら、皆すごく喜んでくれました」
長女は島の小学校に元気に通学。近所の人に野菜や魚をおすそ分けしてもらったりと、地元住民との交流も楽しんだ。
「実は3番目の子どもは島で生まれたんです。島には助産師がいなかったので、陣痛が始まってから、本土からフェリーで来てもらって。到着して20分後に生まれました。あの時はドキドキでした」
様々な思い出の詰まった島。東京に戻ってからも、親しくなった人からみかんを送ってもらうなど、交流は続いている。だが、再訪はまだできていないという。
「いつか必ず家族で行って、お世話になった皆さんにご挨拶したいですね」