くらし

武器による防衛ではなくて、平和思想こそが〈くに〉を守る先制攻撃――住井すゑ(作家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は読書案内から、読みついでいきたい一冊をめぐる言葉を紹介します。
  • 文・澁川祐子
1978年10月10日号「わたしの一冊」より

武器による防衛ではなくて、平和思想こそが〈くに〉を守る先制攻撃――住井すゑ(作家)

著名人が「忘れられない一冊」を語る読書案内。ロケット博士と呼ばれた糸川英夫さん(1912-1999)がヘミングウェイ著『日はまた昇る』について熱く語ったり、ピアニストの中村紘子さんが原田光子著『真実なる女性 クララ・シューマン』を取りあげたりと、人選も選書もなかなかバラエティに富んでいます。

そのなかで注目したのは、小説『橋のない川』で知られる作家の住井すゑさん(1902-1997)。彼女が推薦するのは、花森安治著『一銭五厘の旗』です。

著者の花森安治さん(1911-1978)は、ご存じ『暮しの手帖』を創刊した人物。同書は、花森さんが昭和30年代から40年代にかけて書いた文章を編んだエッセイ集です。

住井さんは、同書の最後に「武器をすてよう」「無名戦士の墓」「国をまもるということ」という三篇が並んでいることに注目します。

そして、<武器による防衛ではなくて、平和思想こそが〈くに〉を守る先制攻撃>だという花森流の非戦の考え方に深く共感を寄せ、<〈武器〉というとカッコイイけれど、人殺しの〈凶器〉のことなのだと、見抜いているのです>と語っています。

住井さんもまた、花森さんと同じように終戦によって、一夜にして世界が180度変わる経験をした人でした。その理不尽な体験から生まれた実感のこもった言葉を、戦争の記憶が薄れゆくいまだからこそ噛みしめたいものです。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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