料理が好きで、うつわに関心を持っていれば、どこかで一度は立ち止まり、見入ってしまう。岩井窯のやきものは、そんなうつわではないかと思います。
鳥取の山あいにある岩井窯は、吉田璋也やバーナード・リーチらに影響を受け、陶芸を志した山本教行(のりゆき)さんが開いた窯元。大変ファンが多く、喫茶や作品館などが集まる「クラフト館 岩井窯」には年間一万人もの人が訪れているのだとか。
以前、岩井窯の土鍋に汁ものが入ったとある料理の写真に思わず目が留まってしまったことがあります。汁ものはさることながら、土鍋の圧倒的な存在感……。その素朴さや温かみに心惹かれてしまいました。また、山本教行さんを紹介した「民芸」がテーマのテレビ番組を見た際には、「生活の中で、毎日無意識に使うもの、思わず手に取るものが民芸」と説明され、深く納得したことが思い出されます。
うつわ好きの私の心を刺激する岩井窯。その窯主・山本教行さんの暮らしや岩井窯のなりたちを振り返った『暮らしを手づくりする――鳥取・岩井窯のうつわと日々』が、スタンド・ブックスから11月26日に刊行されました。