毎日の生活で「あっ、これ」と思うイメージにぶつかったら、大事に記憶に残すのです――犬養智子(エッセイスト)
文・澁川祐子
毎日の生活で「あっ、これ」と思うイメージにぶつかったら、大事に記憶に残すのです――犬養智子(エッセイスト)
いまでこそ共働き世帯が多くを占めますが、クロワッサン創刊当初は専業主婦世帯が主流の時代。2017年の共働き世帯は1,188万世帯、専業主婦世帯は641万世帯に対し、1980年は共働き世帯は614万世帯、専業主婦世帯は1,114世帯とほぼ逆転しています(男女共同参画白書平成30年版)。
だからこその「脱専業主婦」と銘打った特集。肝心の中身はというと、家事の負担を減らしてくれる手抜きアイデアはもちろん、人付き合いのちょっとしたコツから子育てのヒント、おしゃれのアドバイスまで多岐にわたっています。
具体的すぎるがゆえに現代の生活にはあまり参考にならないかな、と読み進めるなかで引っかかったのが「おしゃれのセンスは他人から盗む」と題した一節に出てくるひと言。シックな女友だちや映画のワンシーンなど、生活のなかで「あっ」と思ったイメージは流してしまわない。大事にインプットして糧にしようと呼びかけています。
これはおしゃれにかぎらず、いろんなことに当てはまること。同じように暮らしていても、得るものが多い人はやはり「あっ」を大事にしているに違いありません。
さらっと読みすごしそうになりながらも、このひと言に引っかかったのは、やはり私のなかで「あっ」が働いたからでしょうか。引きあいに出す例が、映画『軽蔑』(1963年)に出てくる、裸に赤いバスタオルを巻いたブリジット・バルドーの姿であるところなど時代をおおいに感じさせますが、胸の片隅にちょっと留めておきたい言葉です。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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