くらし

最初で最後(!?)の動物園へようこそ。パナソニック汐留美術館 『マイセン動物園展』

  • 文・知井恵理
《スノーボール貼花装飾蓋付昆虫鳥付透かし壺》ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー 1820〜1920年頃 個人蔵 「『王妃に枯れない花を贈りたい』という王の願いから始まった「スノーボール」シリーズは、後期の作品ほど自然主義になり、鳥や草花の装飾が見られます」

キリンにマントヒヒ、シロクマ、ペンギン、カワウソ……と、まさに動物園並みのバリエーション豊かな作品がそろった本展。ドイツの名窯、マイセンの食器や置物は日本でも愛好家が多いが、これほど動物モチーフの作品が作られていることは、あまり知られていないだろう。

「マイセンの動物シリーズの特徴は、とことんまでリアルさを追求していること。たとえば、『カモとカエル』という作品では、マガモの雄に見られる尾のカールした羽まで再現されています。写実的な作風や、それを忠実に再現できる技術力は見どころのひとつです」(パナソニック汐留美術館学芸員・岩井美恵子さん)

《ライネケのキツネ》マックス・エッサー 1924〜1934年頃 個人蔵 「絶妙な直線で作り上げられたマイセンのアール・デコを代表する作品で、世界でも数点しか残っていない貴重なものです」

館内では、4つの章でさまざまな動物に出合うことができる。第1章では、楽器を演奏する21体の猿の像から成るユニークな作品『猿の楽団』など、神話と寓話をモチーフとした作品を展示。第2章では、器に装飾された愛らしい鳥や鹿などがお迎え。小花彫刻で飾られた「スノーボール」シリーズは、色とりどりの鳥たちのほか、躍動感あるカエルや、クワガタといった虫たちも作品を彩っていて愛嬌たっぷりだ。第3章では、有機的なフォルムを活かすやわらかい発色が特徴のアール・ヌーヴォー様式の動物たちが待っている。優雅にたたずむ猫やペンギン、凜々しいシマウマなどは、いまにも動きだしそうなリアルさも見どころといえるだろう。本展の最後を締めくくる第4章では、20世紀前半にモデラー(原型師)として活躍したマックス・エッサーによる動物が待っている。『ライネケのキツネ』に見られる後ろ脚で立ち上がるキツネや、後ろを振り向く『カワウソ』といった動物のかわいらしい一瞬をとらえた作品に、思わず見入ってしまうに違いない。また、ここでは各作品の地肌にも注目したい。マックス・エッサーは、その卓越した技術力で、マイセンにおけるアール・デコ様式を確立した人物。素材の艶感やなめらかさを多くの作品で存分に表現している。

「展示品の約9割が展覧会初出品なのですが、そのほとんどが個人蔵のため、次回の公開は未定です」

マイセンの高い造形力を味わえる動物園、お見逃しなく。

《二匹の猫》オットー・ピルツ 1934〜1940年頃 個人蔵 「猫の毛の柔らかさを表現するために、釉薬の中に絵の具を染み込ませてソフトに発色させる、イングレイズ技法が用いられています」
《カワウソ》マックス・エッサー 1927年 個人蔵 1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞したモデル。「立体的な造形に適しているベッドガー炻器(せっき)は、彫像に重宝されました」
《二匹の猫》オットー・ピルツ 1934〜1940年頃 個人蔵 「猫の毛の柔らかさを表現するために、釉薬の中に絵の具を染み込ませてソフトに発色させる、イングレイズ技法が用いられています」
《カワウソ》マックス・エッサー 1927年 個人蔵 1937年のパリ万国博覧会でグランプリを受賞したモデル。「立体的な造形に適しているベッドガー炻器(せっき)は、彫像に重宝されました」

『マイセン動物園展』
パナソニック汐留美術館 〜9月23日(月・祝)

東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F TEL.03-5777-8600
開館時間:10時〜18時(9月6日は〜20時。入場は閉館30分前まで) 水曜休館 料金・一般1,000円。https://www.panasonic.co.jp/Is/museum/

『クロワッサン』1004号より

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