ライターとしていろいろな人の暮らしぶりを取材する一田憲子さんは、自他共に認める“真似しんぼう”だ。
「素敵な人の暮らしをのぞいて、真似してみるのが大好き。取材で会った人が漆のお椀を使っていたら、私も同じものを持てば、その人みたいな暮らしができるんじゃないかと思ったり」
けれどあるとき、はたと気がついた。
「いっぱい物は持っているのに、使う時間がない。せっかく集めたのにちっとも味わってないよって」
なぜ味わう時間がない? 振り返ってみて浮かんだのは、暮らしに余計な手間をかけすぎている自分の姿。
「心地いい生活ってこうだよね、丁寧に暮らすってこういうことだよね、と理想形を描いて、それに自分の暮らしをあてはめようとしていました」