松尾さんの多拠点暮らしの始まりは、’11年の東日本大震災をきっかけに構えた軽井沢のセカンドハウスから。
「当時の東京の家は広かったため、物もたくさん持っていて。夫は料理好きで、私は食べるのが好きなので、ワインセラーやパンを焼くホームベーカリーなどもありました。でも、セカンドハウスには揃っていないから、それらがない状態で暮らすわけですよね。で、なければないで、やっていけたんです。だったらそれは“なくてもいいもの”なのでは?って」
そうやって物はどんどん減っていき、福井に3つ目の拠点を構えたころには、「超必要最低限、超必需品」のみに絞られていた。
「たとえば東京の家にしか置いていないものは、軽井沢や福井の家にいる時にないと不便を感じてしまうので、いっそなくしてしまいます。一方で夫のこだわりがある調理器具は、3つの家すべてに同じものを置いています」