旅するような暮らしを実践中! 松尾たいこさんの三拠点生活。
撮影・土佐麻理子
“お気に入り”だけを残していったら、自然と物が減っていた。
松尾さんの多拠点暮らしの始まりは、’11年の東日本大震災をきっかけに構えた軽井沢のセカンドハウスから。
「当時の東京の家は広かったため、物もたくさん持っていて。夫は料理好きで、私は食べるのが好きなので、ワインセラーやパンを焼くホームベーカリーなどもありました。でも、セカンドハウスには揃っていないから、それらがない状態で暮らすわけですよね。で、なければないで、やっていけたんです。だったらそれは“なくてもいいもの”なのでは?って」
そうやって物はどんどん減っていき、福井に3つ目の拠点を構えたころには、「超必要最低限、超必需品」のみに絞られていた。
「たとえば東京の家にしか置いていないものは、軽井沢や福井の家にいる時にないと不便を感じてしまうので、いっそなくしてしまいます。一方で夫のこだわりがある調理器具は、3つの家すべてに同じものを置いています」
ほかにも、物に関するルールがある。例えば洋服。頻繁に帰省する実家に、適当に買った安価な衣類を“置き服”にしているという人も多いのでは?
「私も最初、別宅にはいわゆる2軍、3軍の服を置いていたんです。でも、そういう服を着て過ごしていると、確実にモチベーションが下がっちゃうんですよね。東京での暮らしも含めて、部屋着、普段着、よそ行きといったランクの中から、部屋着というものをなくしました。テンションが下がらない普段着をベースに、よそ行きを何着か。私はファッションが大好きで、何百着も服を持っていたのですが、間に合わせで買ったような服は処分しお気に入りだけに絞り込んだおかげで、だいぶ数が減らせました。どの家にもお気に入りの服しか置かないので、以前のようにスーツケースを送ったりする必要もなくなりました」
どれもが先発メンバーだから、 来客向けのものは存在しない。
ランク分けをしない、減らすというのは、日用品においても同様。
「お客様用の何か、というのも置いていないんです。そこに差はつけない」
見回すと確かに、スッキリとした部屋の随所に配されたものは、どれもセンスや質が揃っている感じがする。
「とにかく嫌いなものは置かないことにするだけで、部屋は整うと思います。私はもともとガチャガチャしたデザインやプラスチックのものは好まないので自然と今の形になりました。日用品も、セカンドハウスだからと安物で揃えても、すぐに飽きてしまうし」