自律神経の乱れはイライラのもと。呼吸法を見直して、心身を整える。
身体のメカニズムを踏まえた呼吸法で心身の不調を整えていこう。
撮影・森山祐子 スタイリング・仮屋園寛子 ヘア&メイク・浜田あゆみ モデル・イリー 文・板倉ミキコ
森田愛子(もりた・あいこ)さん
呼吸整体師。鍼灸師、ヨガ・インストラクター。"体を育て直す"をコンセプトに、4万人以上の施術と指導実績が。近著は『養生思考を身につける』(ワニブックス)。
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)さん
順天堂大学医学部教授。自律神経研究の第一人者として活躍。腸の健康の大切さに着目し、日本初の便秘外来を開設した。近著に『健康の正体』(セブン&アイ出版)がある。
自律神経とは読んで字のごとく、私たちの意思に関係なく、心身の変化に合わせて勝手に働いてくれるもの。
「アクセル役の交感神経と、ブレーキ役の副交感神経が互いに関与し合い、高くなったり低くなったりして、身体の働きを支えているのです。どちらかが高いと問題だというわけではなく、本来人間の機能がうまく働いていれば、自然とバランスを整えてくれるもの。ただ、ストレスや偏った食生活、睡眠不足、運動不足などが原因となり、自らがそのシステムを壊しているのです」と、順天堂大学教授・小林弘幸さん。
一日の自律神経の理想的なバランスは、下記のグラフのとおり。
理想的な自律神経のバランス。
「でも現代人の多くは副交感神経のスイッチが入りにくく、交感神経が優位になりすぎた状態です。イライラや怒りも交感神経を上げる原因。そうなると血管が収縮し、血流が悪い状態が長時間続いてしまいます。頭痛、肩こり、めまい、不眠などの症状は、自律神経の乱れが原因なのです」(小林さん)
また、一般的に女性は40代を境にして副交感神経の働きが衰え、バランスが崩れやすいこともわかっている。
「一方で自律神経は、生活習慣を見直せば自ずと本来ある姿に戻っていくほど、優秀なシステムでもあります。また、日中の些細な行動や感情の動きで、上下動を繰り返す変容性の高いもの。自律神経本来の機能を取り戻したいなら、自分の身体の変化や身体からの声に敏感になることが大事」
そうした自律神経の乱れに気づき、整えるのに有効なのが呼吸。
「呼吸の乱れは自律神経の乱れとも関わっています。呼吸を意識的に行うことで、血の巡りが良くなるのは明らかですし、間接的に副交感神経を刺激することもできます」
本来人間の身体が持っている自然な呼吸を取り戻すことで、心身の乱れを整えることができる、と提唱しているのが呼吸整体師の森田愛子さん。
「力みや緊張を解いたニュートラルな姿勢で行う呼吸は、心も身体も収まるべきところに収まります。その自然な呼吸が身につけば、日常で息が浅くなったり力んだとき、本来あるべき身体との違いに気づくはずです。それが呼吸の乱れであり、身体からのサインです。まずは、自分の呼吸にしっかり意識を向けてみてください」(森田さん)