中野 プロポーションが崩れるのも心配だと思いますが、筋肉がないために起きる問題としてもっと気をつけなければならないのが、ロコモティブシンドロームになってしまうこと。通称「ロコモ」と呼ばれる状態です。
渡辺 ロコモ? 何ですか、それ?
中野 「運動器症候群」という意味なのですが、筋肉や骨、関節など、身体を動かすための器官が衰えて、日常生活に支障が出る状態を指します。立ったり歩いたりという動作ができなくなって、支援が必要に。つまり、要介護状態になってしまうんです。これが今、すごく増えているんです。
渡辺 高齢化社会の影響でしょうか。
中野 実は若い世代のほうが、油断できない状況です。もともと筋肉は20歳あたりをピークに、1年に1%ほど減っていくんです。それでも昔の人は身体を使って生活していたので、ロコモになるケースも少なかった。ところが今は、世の中が急速に便利になっています。街中にエレベーターやエスカレーターがあるし、出かけずともパソコンやスマホで多くの用事が済んでしまう。“動かない”生活のせいで、どんどん筋肉が衰えています。今の40代以上の5人に4人は、将来ロコモになる予備軍と言われているんですよ。
坂田 本当ですか……!?
渡辺 若いときの運動不足で要介護が早まるって、知りませんでした。
坂田 メタボは知ってたけど、そんな、もっとこわいものがあったなんて。
中野 メタボリック症候群は認知度も高まり、治る病気も多くなりました。今、注意するべきはロコモ。世界的に懸念されている健康寿命問題で、政府もたくさん政策を出しています。
坂田 深刻な問題なんですね。
中野 20年後に寝たきりにならないように、今のうちに筋肉の“貯筋”をぜひ始めてほしいです。
坂田 筋肉ってためられるんですか?
中野 はい。あらかじめ量がしっかりあれば、将来筋肉が落ち始めても、影響を低く抑えることができますよ。
渡辺 今からでもつくんでしょうか。
中野 筋肉は何歳からでも増やせます。でも、40代と70代なら40代のほうが効果は出やすいので、なるべく早く始めるのが得策。筋肉量を増やすだけでなく、柔軟性や筋持久力などもあわせて高めていくことが大事です。若々しい身体をキープするためにも必須。
坂田 やります!
渡辺 今の自分の筋力がどれくらいか、知りたいよね。
中野 メタボの可能性を腹囲で測れるように、ロコモにも判断基準となる運動がありますよ。柔軟性など他のテストとあわせて、のちほどやってみましょう。その上で、トレーニングもお教えします。
渡辺 ぜひ、よろしくお願いします。
中野 ちょっときついかもしれませんが、やや強めの運動を週に3日以上行うと効果が出やすいです。
坂田 え〜! 最近全然運動していないし、できるかなぁ……。
中野 最初はできる範囲でいいですよ。ただ、筋肉は、限界を感じた後の運動で増えることも知っておいてください。
渡辺 限界を感じる前にやめてしまうと、ただの疲労で終わっちゃうんですね。もったいない。
中野 お2人で励まし合いながらぜひ。トレーニングは、誰かと一緒だとドロップアウトしにくいのでいいですよ。
坂田 そうですよね。お互い、トレーニングしている写真を送り合おう(笑)。
渡辺 よく見ると毎日同じ写真だったりしてね(笑)。
中野 最初はきつくても、徐々に階段を上ったりという日常動作がラクになるのを実感できるはずです。
坂田・渡辺 がんばります!