もしかして、私も? 口臭の悩みを一掃したい。
撮影・森山祐子(財津さん)、黒川ひろみ (角田さん) 文・石飛カノ
原因は? においの正体は? 対処法は? 気になる口臭の基礎知識。
そもそも自分には他人を不快にするほどの口臭があるのかないのか? 自分では判断しがたいからこそ、においの分類や成分を知り、原因を一つずつ解消していくことが、不安を払拭する近道といえる。東京医科歯科大学大学院助教、財津崇さんによれば、
「外来に来る患者さんで最も多いのは50代の女性です。年齢が高くなるにつれて歯周病の悪化や唾液量の減少により、口臭は強くなる傾向にありますが、60代以降は会社をリタイアしたりして気にする方が減ってきます。また、男性より女性のほうが口臭への意識が高く、外来が平日診療でもあるので、50代女性が多いようです」
つまり、リタイアしたりして社会との接点が少なくなると、口臭を気にしなくなる傾向があるということ。口臭への意識は、まず人間関係ありきなのだ。口臭への意識の高い人や悩みの深い人たちは、インターネットで情報を集めたり、かかりつけの歯科医院で相談したりして、病院の「口臭外来」を訪れる。また、患者の8割以上は真性口臭症で、実際に客観的に口臭が認められる、と財津さん。
「さらに、真性口臭症の90%以上は口の中の病気や汚れが原因です」
腐った卵。血生臭い。生ゴミ。 3つの口臭原因物質とは。
口臭には、誰にでも見られる生理的口臭と病的な口臭がある。
前者は起床時や空腹時、緊張したときなど唾液が少なくなることで生じる口臭。生理時の口臭もこれに属する。これらは誰にでも起こることなので、病的とは判断されない。とくに起床時や空腹時など、唾液が少ないことで生じる口臭は、歯磨きや食事をすることで唾液が出てくれば、細菌が洗い流されて改善する。
一方、後者は口や全身の病気が原因のもの。口臭の大部分が歯周病、多量の舌苔など口が原因で生じる。同じ病的口臭でも、糖尿病などの全身疾患が原因となることもあるという。また、ニンニクやタバコなどの嗜好品による口臭は原因が明らかなので、この2つとは別のものとみなされる。
では、病的口臭に分類されるにおいの正体は一体何か?
「口の中の病気や汚れによる口臭のにおい物質は、細菌がタンパク質を分解してつくる揮発性の硫黄化合物です」
代表的な硫黄化合物は3種類。
「ひとつは、卵が腐ったようなにおい。これは硫化水素に由来し、舌苔が原因であることが多いと考えられています。歯周病ではその硫化水素と同時に、血生臭いにおいの原因になるメチルメルカプタンが見られます。生ゴミのようなにおいの硫化ジメチルは古い舌苔が溜まっていたり、服用している薬によって生じる場合もあります」
いずれにしても、丁寧な歯磨きや歯科医院での歯周病の治療や予防、唾液を出すマッサージなどで口臭は軽減できる。なかでもとくに有効なのは舌苔を除去すること。
「硫黄化合物は舌の清掃をすることでかなり軽減できます。舌苔の正体の大部分は口の中で剥離した粘膜の垢、それに細菌。歯垢と同様、舌表面に付着するので、舌ブラシややわらかい歯ブラシで取り除くことが有効です」
舌の清掃は朝起きた直後、つまり朝食前に行うのが最も効果的。というのも、舌苔は夜寝ている間に滞留しやすいから。また、舌を清掃した後はその下に潜んでいる細菌が口の中に広がってしまうので、逆に口臭が強くなることもある。舌ブラシを使った後は、よくうがいをすることを忘れずに。
「基本的には口臭の原因を知って、自分に口臭を生みやすい生活習慣があるかどうかをチェックすることが重要。同時に鏡で舌苔の厚みや範囲を観察し、舌がどういう状態なのかをチェックすることも大事です」
「息さわやか外来」受診患者の診断名
《対策》
●丁寧に歯磨きをする
●歯間ブラシやデンタルフロスを使う
●舌苔を除去する→ 舌ブラシや、やわらかい歯ブラシ
●歯科で定期的に治療や歯磨き指導を受ける
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