一生自分の歯で食べていくためには生活習慣の改善も必須だ。なかでも齋藤さんが警鐘を鳴らすのは、歯の接触時間について。
「上下歯列接触癖(TCH)がある人は、無意識のうちに口を閉じている時に歯を合わせています。そうすると、常に歯や歯槽骨が圧迫され続けることで、さまざまなトラブルが起きます。この癖のある人が歯周病になると、歯のぐらつきも早まりますし、歯を失うまでの期間も短くなります」
自分がTCHになっているかどうかは下のチェック法で診断できる。もしTCHの傾向があるならば、歯をグッと噛み締め、鼻から大きく息を吸い込み肩を持ち上げ、「あっ」という声とともに、一気に息を吐き肩を落とす脱力行動を繰り返すといい。
「TCHの人は顎関節症になる危険性も高いので、注意したいです」
虫歯予防の点では砂糖を極力摂らないことも大事だ。
「虫歯発生の中心的な役割を果たすのは口中にいるミュータンス菌です。これが砂糖(ショ糖)をエサにしてプラークを作ります。したがって砂糖を摂らないような食生活をすれば、基本的に虫歯にはならずにすむわけです」
プラークケアでいえば、歯みがきも重要だ。ただし、齋藤さんが逆に注意するのは「みがきすぎ」による弊害。
「歯と歯肉の境目は非常に薄いので、1日に何度も強くこすると、傷ついてすり減ります。1日1回でいいので、この部分を力をかけずに毛先をさしこむように当てて、歯ブラシを小刻みに動かすことと、プラークがたまりやすい噛む面の溝と歯と歯の間を鏡を見ながら歯ブラシを当ててほしいです」
ずっと自分の歯で食べるためには、定期的なチェックも必須だ。
「50歳を超えると、歯の残存数は急激に減っていくことが国民健康調査などでわかっています。信頼できる歯科医のケアを、できれば定期的に受けるのが歯を長持ちさせる秘訣です」