歯を失うもうひとつの大きな原因となる歯周病は、歯の構造のなかで、どのように進行するのか?
「歯と歯肉の境目には歯肉溝(ポケット)と呼ばれる窪みがあります。ここにプラークがたまると、プラークの中にあるばい菌が原因で歯肉に炎症が起きます。歯肉が腫れるとポケットの溝はさらに深くなり、歯を支えている歯槽骨を次第に溶かしていきます。歯周病とはこのようなプロセスを経て、結果として歯を支える歯槽骨がどんどんなくなり、最後には歯が抜ける病気です」
歯周病は初期の段階では痛みや自覚症状がなく、サイレント・ディジーズ(静かに進行する病気)といわれる。
「歯槽骨が減ってくると、歯肉の炎症は治まっても元の状態には戻りません。歯周病は風邪や胃腸炎のように回復可能な病気ではなく、症状がひたすら悪化する一方通行の病気なんです」
歯周病の進行はポケットの深さで判断できる。健康な歯周組織を維持できている人なら、ポケットの深さは2mmほど。これが3〜4mmほどになると歯肉炎と呼ばれ、歯槽骨は減っていないが、歯肉に炎症が起きてくる。さらにポケットが5mmになると歯周炎と呼ばれ、歯石がポケット内に付着した状態になるほか、歯槽骨が溶け始める。
「ポケットが6mmに達すると抜歯を勧める歯科医が多いです。それは大学の授業で教わることもありますが、この段階で放置すると一気にポケットが深まり、歯槽骨も痩せ細るからです」