金本 油は高カロリーだからノンオイルドレッシングを選びがちですけど、体のためにはオメガ3の油やオリーブオイルなどの良質な油を利用したほうがいいと思います。
大平 野菜サラダはダイエットの最後の砦みたいなところがありますから、ドレッシング選びは重大です。
金本 ところで、同じ糖質でもどうやって摂るかで変わってくるんですね。たとえば食パンはトーストにすると血糖値が上がりにくくなりますし、いったん冷凍して解凍したパンもでんぷんが消化されにくい性質に変わるので上がりにくくなります。
大平 いつも摂取カロリーばかり気にしているので、自分に負けて食べちゃうときがあるんですね。でも糖質に意識を置いて、血糖値の上がり方に気をつけるという先生の考え方なら私にもできそうって思えます。
金本 一昨年の薬学会で発表したのですが、少量で血糖値の上昇を抑える働きがあって興味深いのが山芋です。ごはんだけ、ごはんに山芋をかけて食べたときの数値を比較するとごはんに50ℊ程度の山芋をかけて食べると明らかに血糖コントロールがよくなるんです。コンビニのざるそばに付いてくるとろろの小袋が40g。あの程度のとろろをごはんにかけて食べると血糖値が上がりにくくなる。ところが山芋を加熱すると、効果は半減するんです。
大平 同じ食材でも生と加熱では違ってくるんですね。いいことを聞きました。夕食にとろろごはんやまぐろの山かけとかも入れますね。
金本 おかずにも納豆、オクラ、めかぶなどのネバネバ食品を加えてください。水溶性食物繊維がたくさん含まれていますし、血糖値の上昇を抑えてくれます。
大平 私の場合、お酒を飲むことが多いのでその糖質が気になるのですが、血糖値スパイクに影響は?
金本 心配ご無用。お酒自体は血糖値を上げにくくするんです。
大平 エッ、本当ですか?
金本 ビール、日本酒、ワイン、ウイスキー、ウオッカ、すべてのお酒は血糖値を上げにくくします。飲み過ぎには注意が必要ですが、瓶ビール1本ぐらいだったら糖質は気にしなくていいですよ。アルコールを摂取すると、肝臓で糖質を作りだす糖新生という作用が抑制されるんです。だからアルコールを飲まないときより飲んだほうが血糖値は下がります。
大平 日本酒なんてとくに糖質がダメだと思っていました。これって人類を幸せにする話ですよね(笑)。
金本 お酒を飲むと食事時間が長くなるでしょう。同じものを食べるのでも、よく噛んでゆっくり時間をかけて食べたほうが血糖値の上がり方もゆっくりになっていいんですね。
大平 私が取材した家族や夫婦での食事時間が長い人たちには共通項があって、日本酒を飲んでいるんです。お猪口で差しつ差されつみたいな間合いがあって、会話を楽しみ、料理を楽しめるのがいいんでしょうね。
金本 それはいいことですね。健康面でも、家庭の和にもつながるし。