髪が変われば、服も変わる。麻生祐未さんの髪アレンジで気分一新
撮影・横浪 修 ヘア&メイク・北 一騎 スタイリング・大沼こずえ 文・嶌 陽子
何歳になってもおしゃれをする人でいたい
からりと晴れた昼下がり。明るい日差しの中で、麻生祐未さんは気持ちよさそうに髪に手をやった。くしゃっとしたニュアンスのあるボブスタイルが、真紅のカジュアルなコーディネートによく似合う。撮影に合わせ前髪を5cmほどカット、後ろも少し軽くした。
「今年の初めに髪をばっさり切って緩くパーマをかけたんですが、だんだん伸びてきて重たくなっていたんです。少し切ってもらうだけで、軽やかな感じになったのがうれしい!」
この日はTシャツにデニムのオールインワンで撮影現場に登場。「着心地のいい服を選んでいるだけ」と語るが、着こなしや小物選びから、日々おしゃれを楽しんでいることが伝わってくる。今回の撮影も、「ヘアアレンジや服によって雰囲気ががらっと変わるのが新鮮でした」と、満喫していた。
長崎県で育ち、大学進学のために東京に出てきたという麻生さん。それまでずっと短かった髪を伸ばし始めたのも、大学生になってからだったと話す。
「長崎にいた頃は化粧品も持っていないし、髪にも気を遣ったことがなかったんです。東京に出てきたら、おしゃれな人がたくさんいてびっくりしました。当時はʼ80年代半ば。バブル全盛期で、周りに長い髪の女性が多くて、自分でも伸ばしてみたんですよね」
その後、俳優として第一線で活躍する中で、演じる役柄に応じて髪型を変える生活を長年続けてきた。
「ショートの時もあれば、長くして後ろでひとつに三つ編みにした時も。役によってヘアスタイルがガラッと変わるのがとても楽しいんですよね。髪型は一番印象を変えられるものだなと思っていますし。髪が変わると、おしゃれに対する気分も変わって『この髪にはスカートもいいかも』なんて、あれこれ考えたくなるんです」
おしゃれ好きで、これまでにさまざまなスタイルを楽しんできた。以前は古着に夢中で、国内はもちろん、旅先の海外でも好きなものを探していたという。その後、ハイブランドに関心を持った時期も経て、最近は着心地や扱いやすさを重視。カジュアルな服を着ることが多い中、「おしゃれはしたいけれど、どんなものを着ればいいのか、今はちょっと迷っている時期」なのだそう。
「自分だけで選んでいると、ネイビーやグリーンなど、つい同じような色になってしまって。だから常にアドバイスを探している感じです。たまにSNSで素敵な着こなしをしている方を見て、なるほどと思うこともあります。ただ、流行は昔ほど気にならなくなったかな。それよりも、自分が好きだと思う気持ちに従いたいですね。最近はあまり服を買わなくなりましたけど、お店に見に行くのは変わらず好きです」
いたって自然体でおしゃれや普段の生活に向き合う麻生さん。外を歩くことが好きで、時間があると家の近所を歩いたり、初めての場所で仕事がある時は、早めに行って周辺を歩いてみるのがいい気分転換になっている。
「旅も好きで、3年前はインドに行きました。そうそう、そこで一緒に旅したインド人の友人に勧められて買ったヘアオイルを毎日シャンプー前につけてるんです。白髪が少し気になってきていたんですが、そのオイルを使うようになってから、あまり増えなくなったような気がしています」
生き生きとした雰囲気のニュアンスヘア×赤
大人の可愛らしさが感じられる、くしゃっとしたニュアンスヘアに合わせたのは、元気が出るビビッドな赤。トップスの水色Tシャツと、シャイニーな透け感のあるボトムスのブルーが効いたチェック柄で、洗練されたカジュアルなスタイルに。「毛先に動きがある、ナチュラルな印象の髪型だから、インパクトのある赤にも合いますね! 新鮮な組み合わせです」
現在、61歳。40代の頃から90代の役を演じてきたこともあり、年齢を重ねることに抵抗はないという。
「90代の格好やメイクをして演技をしていると、『こういうふうに思うんだ』と体感的に分かったりすることも。そんな経験をしてきたからか、年をとることは自然に受け止めていますね」俳優業のキャリアも40年以上だが、「自分は今も教わる立場。若い人たちにいろいろ聞くようにしている」とあくまで謙虚。思い描く60代の過ごし方について聞いてみると、「健康に、アクティブに」という言葉が返ってきた。
「数年前に息子が家を出るまでは、長年息子中心の生活。お弁当も17年間、毎朝作っていましたし。その間、自分のことはほったらかしだったから、いざ自由になると、自分が何を好きだったのか、分からなくなってしまって。ずっと家のことに追われてきたから、ここ数年は休みの日はのんびり、何もしない時間というのを楽しんでいました。でも、そろそろ何かしなくてはと焦り始めているところです」
「元気なうちにペルーのマチュピチュ遺跡を訪れたい」など、これからやりたいこと、行きたい場所はたくさんあると話す。そんな麻生さんが考える、生き生きと年を重ねていくうえで大切なこととは?
「いつまでもおしゃれをする人でいたいと思いますね。気持ちが塞ぐと、服も髪もどうでもよくなってしまうでしょう? でも毎日楽しく過ごしていたり、行きたい場所があれば、髪も服も工夫したくなる。逆に好きな髪型でお気に入りの服を着れば、どこかに出かけたくもなる。そういう前向きな気持ちを忘れないでいたいです」
タイトなまとめ髪が映える気品の漂うスタイル
前髪をサイドに流してタイトにまとめた髪に、深いVネックのワンピースとロングジャケットを合わせた、気品あふれるスタイル。髪はジェルを使ってすっきりとまとめ、前髪は8:2で分けて。きりりとした中にも大人の女性の色気が漂う。足元はあえてハイカットのスニーカーにして、シャープな装いに遊び心をプラス。
リラックス感あふれる、大人のモードカジュアル
ざっくりとしたニットに合わせて、ウェットな質感が出るスタイリング剤を使って、髪に動きが出るようにラフに仕上げた。前髪を上げた無造作なヘアスタイルは、ワントーンの服を華やかに見せる。地味になりそうなベージュでも、異素材をミックスさせるとおしゃれ感がアップ。流行のシアー素材のボトムを組み合わせて、頑張らない大人のモードカジュアルが完成。
『クロワッサン』1142号より
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