“丸める”ポーズでいらないものを手放そう——Dr.高尾美穂のカラダとココロの整え方
あっちにぶつかり、こっちにぶつかりは生きにくい。いらない角は丸めて、本当に大事なものは手放さずに生きていきたいものです。
撮影・森山祐子 イラストレーション・SHOKO TAKAHASHI 構成&文・越川典子
丸める:角をとって丸めるとは、いらないものを手放す作業だと思う
愛媛・道後温泉本館は、130年もの歴史がある見事な木造建築で、階段の角がとれて丸くなっているんです。一体どれだけの人がこの階段を上り下りしたのだろうと想像したものです。
角があるって、石垣がカチッとはまるような気持ちよさがありますが、反面、角と角がぶつかり合うこともあって、なくなって初めて気づくことがあります。
あ、角は、いらなかったんだな、と。
角をとるとは丸めること。丸めるとは、いらないものを手放していく作業だと、私は考えています。
母は茶道の師範で、たくさんの人をもてなす、いわばサロネーゼ。祖父母とも同居して、お茶やお花の生徒さんも大勢訪れ、書生さんも住んでいました。多様な価値観を、私は肌で感じていたのでしょう。
「~でなければならない」という固定観念にとらわれずにすんでいるのは、この環境のおかげ。自然に私の角がとれ、そのうち意識的に角をとって、自分を丸めてきた気がします。
私の人生には誰かと争う時間も労力もいらない。テレビもヘアカラーもいらない。大事に抱えていたいのは、女性の健康を支える今の仕事。
ロールケーキのように大事なものを中心に包み込み、なりたい形に丸めていけているのだろうか。そんなことを、道後温泉で考えていました。
両手両膝をつき、肘を曲げながら頭頂部を床につけます。腕をカラダに沿って後ろに引き、手の甲を床につけます。深い呼吸をして8秒。1日1回。
『クロワッサン』1136号より
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