夏太りにはセルフお灸、胃腸を整え滞りを改善して巡る体に。
撮影・青木和義 イラストレーション・松栄舞子 文・長谷川未緒
「夏の体は、冷房や冷飲食物の摂りすぎで、思っている以上に冷えています」と語るのは、鍼灸師の柳本真弓さんだ。冷えると巡りが悪くなり胃腸の機能が低下し、余分な水分が排出できずむくみがちに。また夏バテ防止にとつい食べ過ぎることで、消化力が落ちて代謝も下がり、夏太りを招いてしまうのだ。
「熱刺激を加えるお灸は、冷えの解消にもってこいです。胃腸の調子が整い、水はけがよくなりますし、適正量の食事で満足できるようになります。気を生成する胃腸が元気になることで、エネルギーも湧いて活動的に。夏太りの解消に役立ちますよ」
これからの時季は胃腸の調子を整えるツボをベースに、夏太りの人が抱えやすい悩み別のツボにアプローチを。左右対称にあるツボをお灸で刺激する際は、東洋医学的には女性は右から行うとよいとされる。心地よさを一番に、下のポイントも参考に始めてみよう。
●Point
・熱いと感じたら我慢しない。
・1日2〜3個のツボを目安に。
・食事と入浴の前後は避ける。
お灸のやり方
1.ツボに印をつける。
お灸を貼る位置にペンで印をつける。こうしておくことでお灸に火をつけた後に慌てない。
2.お灸に火をつける。
台座裏の薄紙を取り、点火する。横向きにして炎に近づけると、指が火に触れにくく安全。台座の粘着力を保つため、側面を持つとよい。
3.ツボにお灸を貼る。
印をつけたところにお灸を貼る。灰がこぼれてもいいようにタオルを敷いておくとよい。
4.はがして消火する。
台座が冷めたらお灸をはがし、水入りの容器に入れ、完全に消火してからゴミ箱へ。
好みに応じて選べるお灸アイテム
その日の気分で香りを選べる。
花、果物、香木、緑茶の4つの香りがセットになっている。温熱レベルは低めで、熱いのが苦手という人にもおすすめ。
サッと火がつき、煙やにおいが出ない。
火をつけても煙が出ない炭化もぐさを使用。お灸の煙やにおいが気になる人も室内で気軽に使える。火がつきやすく、短めの温熱刺激。
初心者でも安心な火を使わない温熱刺激。
お灸の台紙に付属の蒸留水を少量つけると発熱。衣類を着たまま、立ったままでも使える。奈良吉野桧、京都京北黒文字、長野小諸薔薇の3種の香りがある。
【ベースのツボ】
夏太り解消の要、胃腸の調子を整えるツボから1、2個、その後から紹介する悩み別のツボから1、2個選んで行うと効果的。
胃腸の調子を整える。
体が冷えて胃腸の働きが弱まると気(き)・血(けつ)・水(すい)の巡りが悪くなり、むくみを引き起こす原因に。胃腸を整えることで、消化・吸収力が上がり、基礎代謝もアップする。
足三里(あしさんり)
膝のお皿の下にある外側のくぼみから指4本分下、すねのすぐ外側にある。胃の具合が悪いと感じたら、まずはこのツボをお灸で刺激するといい。胃の働きを高め、消化不良を改善、余分な水分を排出する働きがある。床に座り軽く膝を曲げるか、椅子に座って行うとよい。
中脘(ちゅうかん)
みぞおちとおへそを結んだ線の中間にある。お腹の冷えを取る、胃痛を改善する、消化を助けるといった働きがある。お腹を触ったときに冷たいと感じたり、押したときにこわばりや痛みを感じたときに。冷たいものを飲んだり食べたりしすぎたときにもいい。仰向けに寝て行う。
太白(たいはく)
足の親指の付け根で、足の裏と甲の境目(中間)の皮膚の色が変わるところ。胃もたれ、胃痛を改善し、消化吸収を助け、余分な水分を排出する。お通じをよくする働きもあるので、便秘や下痢のときにも。あぐらをかくか、床に座り軽く膝を曲げて、あるいは椅子に座って行う。
【悩み別のツボ】
体が冷える。
冬に比べて基礎代謝の低い夏に体が冷えると、さらに代謝が低下して脂肪も燃えにくく、夏太りの一因に。お灸で体を芯から温め、循環をよくして低代謝の改善を。
三陰交(さんいんこう)
足の内くるぶしの一番盛り上がったところから指4本分上、骨のきわにある。血流を促し、冷えを取るツボで、冷房にあたりすぎたときなどにいい。床に座って軽く膝を曲げる、あぐらをかくなどの姿勢で行う。
湧泉(ゆうせん)
足裏(指をのぞく)を縦に3分割したときの指側3分の1、足でグーをしたときに一番凹むところ。生命力が泉のように湧いてくるといわれるツボで、下半身の冷えやストレスの緩和にも。あぐらをかくなどして行う。
足がむくむ。
冷えや胃腸の機能低下、運動不足等で巡りが悪くなると、体内の水が下にたまって足がむくむ。むくみを放置すると水太りを招くことに。体の水はけをよくして改善しよう。
尺沢(しゃくたく)
肘を曲げたときにできるしわの線の上、外側3分の1のところ。沢という字からわかるとおり「水」に関係し、体内の水の流れを整えてむくみを改善。汗が止まらないときにも。肘を膝やテーブルにのせ、安定させて行う。
陰陵泉(いんりょうせん)
すね内側の骨のきわを上にたどっていくと膝の骨とぶつかり指が止まるところにある。むくみ改善の代表的なツボで、リンパを流し、巡りをよくする。湿度が高くて体がつらいときにもいい。立て膝やあぐらの姿勢で行う。
体がだるい。
夏は冷房と外気温の落差で自律神経が乱れ、だるかったり疲れやすかったり。運動量が低下して体も重くなりがち。エネルギーを補うツボで、夏も活動的に過ごせる体に。
神闕(しんけつ)
おへその中央にある。元気が出入りする門で、お灸で刺激することで体の芯まで温まり、自律神経が整い全身にエネルギーがみなぎる。熱さを感じやすい人は、塩をおへそにつめてから行うといい。仰向けで行う。
合谷(ごうこく)
人差し指の第3関節と、親指と人差し指の骨が交わる部分の中間にある。万能なツボで、特にエネルギーを補う。体がだるくて力が出ないときに行うと、心身がすっきりする。膝やテーブルに手をのせ、安定させて行う。
寝つきが悪い。
手足は冷たいのに上半身は熱い〝冷えのぼせ〟になりやすい夏は、寝つきが悪くなりがち。寝不足により陰陽のバランスが崩れると、暴飲暴食の原因に。快眠で食べ過ぎを防ごう。
築賓(ちくひん)
内くるぶしの一番盛り上がったところからこぶし1個分上のふくらはぎ側にある。解毒のツボとして知られるが、足がむずむずしたり、イライラして眠れないときにも。立て膝やあぐらの姿勢のほか、椅子に座って行う。
然谷(ねんこく)
内くるぶしの斜め下、土踏まずの一番高いところ。生命エネルギーを司る腎に関係するツボで、疲れているのに寝つけないときや足が冷えているときに。寝ても疲れが取れない人にもいい。軽くあぐらをかいて行う。
*お灸を行う際は、火気の取り扱い、やけどに充分注意し、使用説明書を参照のうえ、使用してください。
『クロワッサン』1121号より
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