からだ

不眠、ストレス、めまいや腰痛に、10秒でできる首伸ばし・首回し。

頭と胴体をつなぐ首は、全身のめぐりの大事な拠点。
病気とまでは行かないけど疲れがとれない、寝起きが悪いのは、首の滞りのせいかも。
伸ばして回して改善を。
  • 撮影・小川朋央 文・恒木綾子

「首には全身の調子を司る非常に重要なツボが集まっています」と言うのは、目白鍼灸院院長の柳本真弓さん。

「首回りに集まるのは、頭痛やめまい、鬱といった不調を招く“脳”と深い関わりがあるツボ。また、首には神経が草むらのように集まっている神経叢(そう)と呼ばれる部分や脳に流れる太い血管も存在するため、首のめぐりが悪くなるとさまざまなトラブルが出てきます」

しかし、スマホ首などの生活習慣病やコロナ禍による運動不足によって、首が凝っている人は増えているという。

「とくに女性は筋肉量が少ないので、腕の重さによって首が凝ってしまう人もいますし、年を重ねれば重ねるほど、重力によって首の筋肉が押し潰されてしまう人も。ですから、エクササイズによって首に点在するツボを刺激し、凝り固まった筋肉の緊張を意識的にほぐしてあげることが大切なのです」

これから紹介するエクササイズは、どれも動きは地味でも効果はテキメン。

「どのツボも非常に効くので、やりすぎは禁物。頭を使いすぎた時や目が疲れた時、リフレッシュ感覚で行うようにしてください。エクササイズが終わった後は首の可動域も広がりますよ」

◎不眠も便秘も、[扶突(ふとつ)]  を刺激して一掃!

顔を横に向けた時に斜めに浮き出てくる大きな筋肉が胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)。その筋肉の上、喉仏の高さくらいに位置するツボが扶突。

慢性的な睡眠障害の改善に効果的なのが、胸鎖乳突筋上にある扶突。

「睡眠の質が悪い人は、胸鎖乳突筋が凝り固まっていることが多い。その上に位置する扶突を刺激し、ほぐしてあげるだけで、リラックスしたり睡眠の質の改善に繋がります」(柳本さん)

また、扶突は大腸の働きも司る。

「扶突は東洋医学で大腸に繋がっていると考えられるツボ。ここを整えることで便秘や下痢といった大腸のトラブルも解消することができます」

そんな扶突にアプローチする首を伸ばすエクササイズをご紹介。

「喉仏周辺には血圧をコントロールするポイントがあるので、あまり長く刺激すると血圧が大きく変わることも。左右10秒程度を心がけてください」

〈首肩伸ばし〉

右手で頭を押さえ、首と鎖骨を遠ざけるように、頭を真横に倒す。反対側の肩が上がらないよう注意して。左右10秒ずつ、ゆっくりと行う。

〈首肩斜め伸ばし〉

両手で鎖骨付近にある胸鎖乳突筋の始点を押さえながら、首と肩を遠ざけるように頭を斜め後ろに倒す。左右10秒ずつ、ゆっくりと。

◎脳に直接繋がる  [百会  (ひゃくえ)]は、物忘れや鬱に効果抜群!

百会は頭のてっぺんに位置するツボ。左右の耳の穴にそれぞれの親指を当て、指を頭の上に持ってきた時に両手の中指が繋がる場所。

百会は一度にいろいろな不調改善の効果を期待できる万能のツボ。

「百会は、体じゅうに点在するツボを線で結んだエネルギーの通り道、経絡が何本も交わる場所。頭痛など、さまざまな不調の改善が期待できますが、脳に直接繋がるツボなので、物忘れや鬱、メンタルの不調に最も効果があります。エクササイズでは百会を軽く押さえながら、何本もの経絡が通る首をぐるぐると回すことで、その起点となる百会により効果的にアプローチできます」

〈頭頂ぐるぐる回し〉

百会の上に両手を重ね、円を描くように首をぐるりと回す。左右それぞれ10回程度。下に向かって両手で圧を加えると回しやすくなる。

◎頭も心もスッキリする、[翳風(えいふう)  ] 、 [安眠(あんみん)]安眠  にアプローチ。

翳風は耳たぶの真後ろにあるくぼみ。口を開けるとくぼんだり、押すと唾液がじわっと出てくる位置。安眠は、翳風の後ろにある硬い骨を超えたところにある浅めのくぼみ。安眠のツボは翳風に比べてやや硬い。

翳風はストレスによる耳なりと、顔や頭のむくみに効果的なツボ。

「ストレスが溜まっている人は、よく耳鳴りがすると言いますが、その場合、翳風が詰まっていることが多いです。なのでここのコリをほぐしてあげると、頭や心がスッキリしてよく眠れるという人も。また、翳風は顔や頭のリンパの通り道でもあり、水の流れを整えてくれる役割も果たします。不眠の人は頭の中がぶよぶよしていることが多いので、翳風を流してむくみを取ってあげることで、睡眠の質も上がります」

翳風のすぐ近くにある安眠は、その名のとおり安眠に効くツボ。

「安眠はその場所がポイント。頭のすぐ近くに位置しているため、ほぐすことで脳を休ませる効果があります」

[翳風  ] はリンパを流すイメージで。

〈耳後ろ押し回し〉

左右の翳風の位置を人差し指と中指で押さえ、リンパを流すイメージで後ろ方向に円を描くように回す。10秒間、ゆっくりと。

〈耳後ろハチ回し〉

指の位置はそのままに、今度は頭を回す。首は回さず、翳風を支点に頭の付け根だけを回すイメージで。右回り、左回り10秒ずつ。

 [安眠]  はしっかり揉みほぐして。

〈首横押し回し〉

親指で左右それぞれの安眠の位置を押さえる。くぼみの中にある硬いコリをほぐすように後ろ方向に押し回す。10秒間、ゆっくりと。

〈首横ハチ回し〉

安眠を親指で押さえたまま、今度は頭を回す。首は回さず、安眠を支点に頭の付け根だけを回すイメージで。右回り、左回り10秒ずつ。

 ◎[天柱  (てんちゅう)]は肩こり、腰痛、背面のトラブルに効果的。

天柱が位置するのは、ちょうどうなじと頭のつなぎ目あたり。首の後ろのくぼみから外に親指1本分。2本の太い筋肉の山の外側。

天柱は体の背面に深く関わるツボ。

「後頭部のトラブルや、肩こり、腰痛などに効果があります。現代人はスマホを見ている時間がとても長く、天柱のあたりが詰まってしまって顎を引けず、頭だけが前に出ている状態。すると、自然と姿勢が悪くなり、腰痛や肩こりはもちろん、眼精疲労も引き起こします。また、同じ経絡上には自律神経に繋がるツボも数多く点在しているため、天柱のコリを取ってあげることでストレスを緩和する効果も」

〈うなじ伸ばし〉

両手で頭を押さえ、後頭部を伸ばすイメージで10秒間頭を前に倒す。肘を前に、あごをしっかり引き、肩甲骨の間も伸びているのを意識して。

柳本真弓

柳本真弓 さん (やなもと・まゆみ)

鍼灸師

目白鍼灸院院長。数多くのメディアで鍼灸のメソッドを解説。近著は『なんとなく疲れる・つらい・痛いを解消する「ツボ」図鑑』(中央公論新社)。

『クロワッサン』1093号より

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