つらいコリや体の痛み、<ほぐしスイッチ>を入れてラクにしよう。
気負わず生活に取り入れて、活動的な日々を送ろう。
撮影・中村ナリコ イラストレーション・イオクサツキ 文・長谷川未緒
〈ほぐしスイッチ〉を上手に入れて、痛むところをラクにしよう。
「人間の体は本来、負担が分散されるようにできています。しかし、長年にわたって動きにクセができてしまった結果、負担が1カ所に集中し、コリや痛みを生じてしまうのです」と語るのは、理学療法士として介護やリハビリの現場で独自の身体介助法を実践してきた岡田慎一郎さんだ。
そこで岡田さんが提唱する、体の一部にかかった負担を軽減し、正しい動きのポイントとなる「ほぐしスイッチ」を教えてもらった。首や肩のコリを取るには鎖骨、足の痛みには股関節など、日常で、体の「ほぐしスイッチ」となる箇所を意識するだけで負荷が大幅に減る。
「ほぐしスイッチを意識することで、年齢を重ねても、元気に動ける体になれますよ!」
【足】股関節を中心に脚を回転、筋肉の疲労をときほぐす。
歩くときに足裏が均等に地面に着かないと、衝撃がダイレクトに伝わり、足や膝、股関節痛の原因に。
そこで重要なのは股関節。脚全体を回してスイッチを入れよう。
股関節には動脈があるので血流がよくなり、疲れが取れる。歩くときは足の小指を意識し、足形を地面につけるつもりで歩を進めると、衝撃が分散して足が痛まなくなる。
【肩】肩コリの解決のポイントは鎖骨。首、背中もほぐれる。
腕は体重の6〜8%と重いため、肩から動かすと肩先に負担が集中し、肩がこる。そこで腕の起点を肩ではなく鎖骨だと考え、腕の曲げ伸ばしや上げ下ろしを鎖骨から行うように意識してみよう。
重さが分散され、負担も軽減するはずだ。鎖骨を中心に筋肉をほぐせば、コリを改善し、鎖骨から動かすことに慣れる効果も。
鎖骨に指で触れる。肩や腕ではなく、鎖骨を動かすよう、腕を上下にゆっくりと動かす。触れていることで鎖骨を意識しやすい。反対側も同様に。肩甲骨も連動して動き、背中もほぐれる。
次に、鎖骨に指で触れたまま、腕を鎖骨から前後にゆっくりと動かす。反対側も同様に。最後に前回し、後ろ回しと立体的に動かし、肩周りから背中までコリを取ろう。
【腰】腰から全身のほぐしにはうつぶせ寝が効果あり。
腰は股関節から動かし、ゆらゆらと免震構造のように前後左右にバランスを取るのが自然な使い方。しかし股関節をうまく使えなかったり、座り時間が長くて腰が固まってしまったりすると、腰痛に。
そこで腰にかかった重さを散らし、リラックスできるのがうつぶせ寝だ。負担がかかりにくい、心地いいポジションで寝てみよう。
【肋骨】気になる呼吸の浅さや肋骨痛は肩甲骨で対策。
なんとなく呼吸が浅く感じたり、肋骨のあたりが心なしか痛かったり……。ちょっとした違和感のある不調は、肩甲骨を動かすと改善することも多い。
肩甲骨と肋骨をゆっくりと動かして周りの筋肉をほぐすことで、胸周りのコリが解消、連動して横隔膜も動くようになり、呼吸が深く、ラクになるはずだ。
足を肩幅程度に開いて、目線は前に向け、ゆったりと立つ。肩を耳にぐーっと近づけるように上げて、すとんと落とし、肩の力を抜く。脇の下を少し開き、手は軽く胸の前で組む。
ゆっくりと肩甲骨の間を開くようにしながら、手のひらを返していく。このとき、肋骨がぐっと上に引き上がるように意識すること。軽く膝を曲げながら行うと、腰に負担がかからない。
肩甲骨の間を充分に開きながら腕を前に伸ばし、手のひらを正面に向ける。肋骨がしっかり引き上がっていることを確認する。膝、股関節を曲げて腰を落とすと、運動効果が高まる。
『クロワッサン』1086号より