その家事、腰に負担をかけているかも?
文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子
意外と家事に多い「曲げる」という動作
毎日何気なく行っている動作には、注意しないと腰に負担をかけるものが多く含まれています。
ひとつひとつの動作が腰に与える負担が小さくても、「塵(ちり)も積もれば山となる」という言葉通り、回数が増えれば耐えきれなくなった腰は悲鳴を上げてしまいます。
常に腰の負担を心配して動くことが逆にストレスになりかねないため、ほんの一部ではありますが、ここで紹介した腰痛を引き起こす動作に注意をすることで、少しでも腰痛が起きるリスクを減らすようにしましょう。
女性が特に注意しなければならないのが、意外に腰を曲げることが多い炊事洗濯といった家事です。さらに孫の面倒を見る育児や家族の介護が加わる人もいるはず。
また、毎日上げ下ろしの手間がかかる布団からベッドに変える、膝を痛めやすい正座をやめて椅子に座るなど、加齢により衰えた体への負担が少ない生活様式への転換を検討することも大切です。
【「正しい姿勢」で家事をするポイント】
●掃除
掃除機やモップを使うと前かがみや中腰になりやすいため、掃除機のノズルは延長管をつけて長くしたり、モップも柄が長い物を使用したりすることで、背筋を伸ばしたまま掃除できるようにしましょう。
机の下など低い場所を掃除する場合は、その場にしゃがんで背中を丸めないようにするのがポイントです。
なお、四つん這いの姿勢での床の雑巾がけは、背筋をまっすぐしてくれる多裂筋を鍛える効果があるため、モップを雑巾がけに変えるのもおすすめです。
●調理
調理台が高すぎる場合は、踏み台で高さを調整できますが、低すぎる場合は、「顔を洗う」ときと同じく、踏み台に乗せた足の膝を曲げると、腰への負担を軽減できます。
その場合、調理は洗顔と違って時間が長くなりますので、踏み台に乗せる足をときどき替えるようにしましょう。
なお、台所にテーブルがある場合は、テーブルの椅子に座りながら食材の下ごしらえをすませると、より負担を減らすことができます。
●洗濯
床に置いた洗濯かごから洗濯物を取り出すたびに腰を曲げたり、物干し竿に洗濯物をかける時に背伸びをしたり、洗濯という家事は腰に負担のかかる姿勢が多くなってしまいます。
その負担を減らすために、無理に背を伸ばさなくても手が届く高さに物干し竿を設置する、洗濯物を入れた洗濯かごを台などに乗せて腰を曲げなくても洗濯物を取れるようにする、などの工夫を取り入れましょう。
なお、普通の洗濯物もメッシュの袋に入れて洗うと、洗濯機からスムーズに取り出せて腰を曲げる時間が短縮でます。
【洗う】
●髪や体を洗う
シャワーヘッドの位置を高くできる場合、中腰にならず立ったままでお湯を浴びましょう。しかし、シャワーヘッドの位置を高くできない場合は、座面が高い浴室椅子に座り、後ろ向きでお湯を浴びると前かがみを予防できます。膝が腰よりも高くなって前かがみになりやすい低い浴室椅子は、おすすめできません。
●顔を洗う
洗面台は毎日何度も使う場所ですが、高さが身長に対して低いと顔を洗うときに前かがみとなります。そこで、前に出した片足の膝を曲げると、腰への負担を減らすことができます。なお、前に出した足を高さ10~20センチの踏み台に乗せる、または洗面台の下のキャビネットに入れても、同様の効果が得られます。
『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。
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