「正しい姿勢」で歩くことは、腹筋、背筋、大臀筋、さらにその他の足腰の筋肉も鍛えられるため、腰痛の予防に非常に効果的です。
運動としてウォーキングを紹介する本、特にダイエットを目的とするものの多くで、「大股で、腕を振り、速く歩く」ことを推奨しています。ところが、健康維持を目的とするウォーキングにおいては、むしろ「小股で、腕を振らず、ゆっくり歩く」ほうが適切なのです。
その理由は、歩く際の重心移動と、歩くという動作で主に使われる大臀筋、大内転筋(太ももの内側の筋肉)、ヒラメ筋(ふくらはぎの筋肉)、多裂筋(背中の筋肉)の4種類の筋肉の働きが関係します。
人間の重心は骨盤を構成している仙骨のやや前方にあります。歩く動作で一方の足はこの重心を「支持」する役割を、もう一方の足は重心を前方に「推進」させる役割を担っていますが、大股で歩くと、重心の位置が着地した足(推進役)から離れてしまうため、次の足を前に繰り出す(支持役だった足が推進役に交代する)ときに、どうしても重心移動が難しくなってしまうのです。
また、大股で歩くときに使われる筋肉には、瞬発力はあるけれど疲れやすい「速筋」の割合が多くなります。一方、大臀筋、大内転筋、ヒラメ筋、多裂筋はゆっくりと収縮して持久力があるので疲れにくい「遅筋」の割合が多いため、小股のほうが長い時間歩くことができるのです。
なお、大臀筋は年齢を重ねることで衰える筋肉ですが、女性は男性よりもそれが早く、55歳ぐらいから大臀筋の筋力低下が始まるとされています。
大臀筋の衰えは姿勢悪化を招いて腰痛を引き起こすだけでなく、膝関節や股関節にも悪影響を及ぼしますので、できるだけ毎日歩くように心がけ、年齢による大臀筋の衰えを最小限に留めましょう。
中高年の場合は、1日の合計歩数が5000~6000歩が目安となっています。