人間は「正しい姿勢」で立っていても、腰に体重と同じ力が加わっているため、姿勢の崩れが大きいほど腰にかかる負担が増え、腰痛を引き起こす要因となります。
しかし、年齢を重ねると自然と筋肉が衰えて運動量も減るため、腹筋、背筋、大臀筋(だいでんきん)(お尻の筋肉)の3種類の筋肉が衰えてしまい、「正しい姿勢」を保つことが難しくなってしまいます。
ただし、最近「悪い姿勢」の原因として多くなっているのが、背筋の中で一番内側に存在している多裂筋の衰えです。多裂筋は頸椎(けいつい)から腰椎にかけて骨のひとつひとつに繋がっている小さな筋肉で、わずかに動くだけですが、吊り橋のケーブルのように背骨を支えています。
例えば、代表的な「悪い姿勢」である「猫背」は、上半身が前に傾いて背中が丸まっています。そのせいで腹筋が衰え、腹筋の拮抗(きっこう)筋(反対の動きをする筋肉)である腰の多裂筋も使われなくなってしまうため、ますます姿勢が悪くなってしまうのです。
昔は雑巾がけをすることで多裂筋を自然と鍛えていましたが、最近はそうした機会も減ってしまいました。そのため、体操で衰えた多裂筋を鍛え直すことで、「正しい姿勢」を取り戻しやすくなります。
なお、最近では土踏まずに代表される足の裏のアーチの崩れも姿勢悪化の原因と考えられていますが、足の裏のアーチを維持する(扁平(へんぺい)足の場合はアーチを取り戻す)ためには歩くことが大切です。そのため、まずはすべての動作の基本である「正しい姿勢」で立つことを身につけましょう。
「正しい姿勢」で立つためには、下で示したさまざまな条件を満たす必要がありますが、なかでも「大臀筋を意識して肛門をしめる」を特に心がけると、よい立ち方ができるようになります。