心とからだの複合不調は「胸と背中」をほぐして改善。
撮影・青木和義 スタイリング・仮屋薗寛子 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・Asami 文・板倉みきこ
たとえば肩が重い時に肩を揉んでも楽にならないことがある。それは不調の原因が患部そのものにはないから、と鍼灸マッサージ師・石垣英俊さん。
「東洋医学には、不調の原因を『時』 『地』 『人』と3つの要因から分析する考え方があります。天候や季節、時間など、外的な条件の『時』、自分が置かれた生活環境などを指す『地』、自分が持つ性質や遺伝から分類する『人』の3点から探っていくと、心身の不調の本当の原因が見えてくるんです」
特にこの1年は、ウイルス感染の不安や自然災害など、自分で制御できない「時」の要因がもたらす不調に悩まされる人が増えた。
「胸がつまる、肩がこる、倦怠感が続く。そんな代表的な不調を軽減するには、胸回りと背中を刺激し、深い呼吸ができる体に戻してあげること。今回は、道具を使わず自分でケアできる方法を紹介します。心身は表裏一体。体が緩むと心まで緩んでいくはずです」
心身に不調をもたらしている、 様々な原因を知る。
【体質】
「人」要因。同じ環境下に置かれても、人にはそれぞれ個体差があり、不調の内容やストレスに対する強度は変わる。年齢、性差、遺伝や性格、体質など、個人が持つ様々な条件から体調不良の原因が導き出される。
【環境】
「地」要因。人を取り巻く環境は様々。雨の多い場所、乾燥地帯など、居住地の地理や地形などの特性が心身に少なからず影響を及ぼす。その他、文化や風習、食習慣など、環境によって起こりやすい不調も想定できる。
【気象】
「時」要因。急な温度や湿度、気圧の変化など、日々の天候に体調が追いつかないことも。最近は異常気象も多く、心身のバランスを乱しやすい。気候の変動や季節の変わり目なども心身の不調の原因に。
【人間関係】
「地」要因。心への影響が大きいのが人間関係。他人と関わる機会が多く、ストレスの因子が増える職場、本来安らぎの場となるはずの家庭が緊張状態になった時など、心の負担が続くと、体調不良へと負の連鎖に。
【社会不安】
「時」要因。ウイルス感染などの突発的な流行、地震、洪水、台風などの自然災害による急激な生活の変化は、心身への負担大。恐怖を煽るニュースなどに翻弄され、先行きが見えない不安からさらにストレスが増す。
不安やストレスが原因の不調を軽減する、誰にでも効果がある3つのケア法。
漠然とした不安を抱えていると、無意識に呼吸が浅くなる。
「呼吸の乱れはまず肩を緊張させます。呼吸に関わる筋肉が集まる鎖骨周辺が固まって前かがみの姿勢になり、脇の筋肉も硬直。その結果、さらに深い呼吸がしづらくなってしまう。すると自律神経が乱れて様々な体調不良を招くことに。今回紹介する3つの『ほぐす』ケアは、呼吸が楽になり、特に不安を感じやすい人に効果的です」
鎖骨下を指先でほぐし、 胸の筋肉の過緊張を解く。
呼吸が浅くなると胸が閉じ、肩を引っ張るため鎖骨下の筋肉が緊張してしまう。鎖骨下のくぼんでいる周辺を狙い、片方の手の3本の指で円を描くように圧をかけ、筋肉のコリをほぐすと、背中の緊張も解け、心身がリラックスする。
実は凝っている脇の下は、 つまんで刺激を加える。
前かがみの姿勢が長いと硬くなる胸の筋肉・大胸筋を、親指と4本の指でグーッと10秒ほどつまむ。緊張や悪姿勢で固まった筋肉が緩み、肩や腕の位置が整う。もみ返しの出やすい場所なので、やりすぎないよう注意。
肩甲骨の筋肉を、 寄せ合う動作で刺激する。
自分ではほぐしにくい、肩甲骨周辺の緊張を解くポーズ。両膝を立てて座り、できるだけ左右の腕を寄せ、指を開いて背面につき、体重をかける。できれば片方の肘を曲げて肩甲骨を寄せ合った状態で静止。左右10秒ずつやるといい。
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