からだ

耳鼻咽喉科医がすすめる「うるうる粘膜」のための腸の整え方。

  • 文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子

【腸内環境が乱れる原因 (2)生活習慣】

夜更かしは粘膜にも悪影響。

(副交感神経が働かず……)
  ↓
(胃腸の働き低下。)
  ↓
(粘膜の荒れ。)
  ↓
(免疫力の低下へ。)
 

体内時計の狂いが自律神経を乱す。

人間のカラダは、活動する昼間は興奮や緊張を引き起こす交感神経が優位に、夜が近づくにつれて心身をリラックスに導く副交感神経が優位になるようにできています。

そのため、昼夜逆転の生活が続くと体内時計が狂い、夜になっても交感神経が優位の状態が続いてしまいます。

夜に副交感神経がしっかり働かないと、まず睡眠の質が低下して胃腸の働きが悪くなります。そうなってしまうと、食べたものを十分に消化・吸収できなくなり、粘膜が荒れ、腸内細菌の働きが悪化して免疫力も低下するのです。

それを阻止するには、夜は日付が変わる深夜0時までに就寝し、朝食をしっかりとるなど、規則正しい生活を送ることが大切になってきます。

規則正しい食事に、 免疫ビタミンLPSが豊富な食材を取り入れよう。

●LPSが豊富な食材

左上から ヒラタケ、めかぶ、ほうれん草、小松菜

LPSは熱には強いが、ビタミンCと同じく水溶性のため、長時間水につけたり、ゆでたりすると溶け出してしまうので、調理方法に注意をする。

いい眠りのために、 夕食を抜く選択肢も。

食べものの消化・吸収には約3時間かかり、栄養バランスがよい食事でも、寝る前に食べると、胃腸に負担をかけ、睡眠の質を悪化させます。

「夜遅くに食事をされる人もいるでしょう。吸収がよく、急速に血糖値をあげる糖質や炭水化物が多い食事は睡眠中に血糖を乱高下させ、自律神経やホルモン分泌に影響する場合もあり、夜遅くには避けた方がよいでしょう」

夕食を食べないことも考えてみては、と北西さん。

「約16時間の空腹によって、細胞のなかにある古いたんぱく質を自ら分解し、新しい細胞に生まれ変わらせる『オートファジー』という仕組みが働きます。オートファジーを働かせる意味でも、夕食を抜くという選択肢もあります」

(大前提)決まった時間に食事をとる。脳にもいい影響が。

【LPSの吸収を助ける乳酸発酵食品も一緒に摂る。】

左上から 味噌・醤油、ザーサイ、納豆、すぐき、ザワークラウト、キムチ

乳酸発酵食品は動物性と植物性の2種類があり、植物性の乳酸菌は生きて腸に届く可能性が高い。

過剰な運動はかえってカラダに悪い。

新型コロナの流行により、外出を控えて運動不足の人も多いでしょう。肥満予防や筋肉維持のために適度な運動は大切ですが、例えば久しぶりの運動だからとクタクタになるまでカラダを動かすのは、実は感染予防の観点からはよくないそうです。

「健康な粘膜を維持するためには、血管の内側の細胞で作られる一酸化窒素を出して血管をよい状態に保つ必要があります。この血管の内側の細胞は、少し汗をかくくらいの運動で働きがよくなります。しかし、きついと感じるほど運動してしまうと、カラダを酸化させる活性酸素が発生し、かえって血管を傷めてしまうのです。実は、カラダの酸化度が進んでいると、新型コロナに感染した場合に重症化しやすいという報告もあります」

人間に備わった抗酸化力は加齢によって衰えるため、ビタミンC、ビタミンE、カロテンなどの抗酸化作用の高い栄養素を積極的に摂取しましょう。

腸を整えるには、ねばねば食材もおすすめ。

左上から もずく、昆布、長いも、オクラ

ねばねば成分は水溶性食物繊維のため、腸内環境を整え、粘膜を保護する働きがある。

(注意)腸によいものを食べすぎると、 かえって腸の働きが悪くなる!

実は小腸には腸内細菌が少ない。

新型コロナ流行の第一波の時期、免疫力を高めると納豆やヨーグルトが飛ぶように売れ、供給が追いつかずにスーパーの棚が空になり、販売時も個数制限が設けられたことがありました。

納豆やヨーグルトなどの発酵食品は、確かに腸内環境を整える食品ですが、過剰に食べすぎてしまうと、小腸内細菌異常増殖(SIBO)と呼ばれる状態になってしまいます。

腸内細菌の大半は大腸にいるのですが、発酵食品のような腸によい食品ばかりを食べていると大腸で腸内細菌が増えすぎてしまい、小腸に移動します。普段の数倍の腸内細菌に転がり込まれた小腸は、彼らが大量のガスを発生させるせいで普段のようにスムーズに消化・吸収ができなくなるのです。

その結果、腹痛・下痢・便秘といった腸の不調が起きるだけでなく、栄養がうまく吸収できなくなり、結果的に免疫力も低下してしまうので要注意です。

北西 剛

北西 剛 さん (きたにし・つよし)

医学博士

きたにし耳鼻咽喉科院長。滋賀医科大学卒業。専門である耳鼻咽喉科領域の日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本気管支食道科学会専門医に加え、日本アーユルヴェーダ学会理事長や日本東方医学会理事など伝統医学の分野でも多くの資格・役職を持ち、患者に対して幅広い治療の選択肢を提供している。『「うるうる粘膜」で寿命が延びる!』(幻冬舎)など、著書多数。

『Dr.クロワッサン 感染症に負けない、カラダをつくる。』(2020年11月30日発行)より。

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