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薬膳の考え方を食事に取り入れる。麻木久仁子さんの健康法。

日々の生活のなかで体を労る術を身につけていれば、疲れを溜めずにリセットできる。真似したくなる健康法を教わりました。
  • 撮影・青木和義 文・黒澤 彩

今日の自分に必要なものを食べることが、薬膳の基本。

薬膳と出合って、“体の声”がよく聞けるようになったと話す麻木久仁子さん。50歳を過ぎた頃から、持ち前の体力や頑張りだけでは疲れを吹き飛ばせないと感じるようになったそう。

「焼き肉でも食べて元気をつけよう! なんていうのは若いうちだけ。今は、疲れているときには疲労回復にいい食材や調理法を選んで食べることで、やさしく手当てをしています」

薬膳というと難しいと思われがちだが、何か特別なものを食べたり、手の込んだ料理を作ることではないのだという。
麻木さんが実践しているのは、ふだんの食事のなかで無理なく取り入れられる薬膳。
たとえば、レシピを紹介してくれた「山芋のチーズ焼き」はシンプルで日常的なおかずのようだけれど、これも立派な薬膳メニューだ。

「山芋は、別名サンヤク(山薬)といって生薬のひとつでもあります。火を通すと疲労回復によいといわれる食材なので、焼く以外にも鶏肉などと合わせて旨煮にしたり、フリットにして食べることも。一番簡単なのは、すりおろしたものを味噌汁に入れる方法。ポタージュみたいでおいしいですよ」

「火を通す」というところが疲労回復の際にはポイントに。一方、同じ山芋でも、生のままだと体に潤いを与える食材になる。そのため、肌が乾燥したときなどは、加熱せずに生で食べるのがいいのだという。
こんなふうに、調理法によって食材の力が変わるのが薬膳の考え方だ。

もう一品の料理「黒い薬膳スープ」は、東洋医学において大切な「腎」の働きを助けるもの。

「腎は排泄やデトックスの機能を司るだけでなく、生命力を蓄える場所とされています。その腎にいいのが黒い食材。
今日のスープには干し椎茸、黒キクラゲ、わかめ、海苔、黒ごまを入れました。黒い食材って意識しないとなかなかとれないものですが、探してみると乾物、海藻などに多いですね。乾物を常備しておけば、いつもの料理にプラスできます」

また、スープや煮物に使う肉はできれば骨付きのものを。骨を煮込めば栄養を余すことなく取り込める。

「一物全体という考えがあって、食材を丸ごと食べることがいいとされます。欲を言えば野菜の皮も剥かないほうがいいのですが、そのためにすべて無農薬のものを求めるのも大変ですから、私はできる範囲でいいやと気楽に考えています」

まずは体を温めるものと、冷やすものを意識してみる。

ひとつひとつの食材について効能を知らなくても、体を温める/冷やすといった違いは見当がつきやすい。体が冷えていると感じたら生姜を加えた汁物を作る。あるいは、体が火照っていたらトマトやきゅうりのサラダを食べる。みんなが感覚的にしている選択は、薬膳の基本ともいえるのだ。

さらに、体調によって調理の仕方を変えてみるのが、麻木さんのおすすめ。もっとも胃にやさしいのは蒸す方法で、あとは茹でる、煮る、焼く、揚げるの順で、胃に負担がかからないという。

「疲れていて調子が悪いなと思ったら、焼かずに蒸してみる。朝は冷たい野菜ジュースではなく温めてスープにしようといった具合に、その時々の体の状態で食べ方を変えられますよね。日常の薬膳って、そのくらいの感覚でいいと思うんです」

旬の食材をおいしく食べることは、健康法という以前に楽しみという面も。続けるうちに、ことさら頭で考えなくても、自然と体が求めるものを選べるようになったそう。

「今の自分に必要なものは何かな?と、体に聞いてあげることが大切。今日の私と明日の私とでは、きっと体が欲するものも違っています」

300g 360円(あぶまた味噌 TEL.03-3372-5211)

江戸甘味噌

「塩分が少ないので焼いた野菜や炒めものにたっぷり使えます」。塩分はわずか、約6%。大豆の香りと米麹の甘みが際立つ。

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