からだ

医師に聞く自律神経を整えるコツ。心身のバランスを保つ大切なホルモンとは?

疲れやすい人は食べ方や暮らし方がちょっと間違っていることが多いと、内科医で漢方医でもある工藤孝文さん。毎日の暮らし方を見直し、免疫力を強くする疲れない体の作り方を取材しました。
  • 文・韮澤恵理 イラストレーション・松元まり子

自律神経のメリハリが心と体のバランスをとる。

体は緊張と弛緩(しかん)をいったりきたりすることでバランスをとるようにできています。

交感神経は活動のモードで、体は緊張しています。集中して何かをしている状態で、神経が研ぎ澄まされ、戦闘態勢で能力を発揮できますが、そのぶん筋肉も神経も緊張し、血管も収縮して細くなり、呼吸は浅く、血圧が上がって体は疲れていきます。

副交感神経は「オフ」のモードでリラックスし、心も体もゆるんだ状態で、筋肉や血管は弛緩してゆったりとし、全身に血液が十分届きます。呼吸が深くなり、血圧は下がります。休息態勢で、消化や細胞再生など、無意識に体をケアする状態で、そのぶん無防備になり、やる気や元気も落ちます。

2つの状態がメリハリをつけて交互にしっかりと切り替わり、どちらか一方に偏らないのが理想ですが、意志の力でコントロールできないのがやっかいです。

夜になっても交感神経優位で、眠りに入れない、朝、交感神経のスイッチが入らず、ぼんやりしてしまうというズレが生じたり、一年中交感神経が高ぶり、イライラや緊張がとれない、逆に副交感神経ばかり優位で、やる気が出ず、うつ状態になってしまうのも自律神経の異常のせいです。

(自律神経のバランス)

〔くつろぎモード〕
血管が拡張ぎみで、血流はゆるやか。体温が下がり、呼吸が深い、リラックスモードだが活動的ではない。

〔緊張モード〕
血管は収縮ぎみで、血流が速くなり、体温も高く、呼吸は浅い。瞬発力はあるが、疲れやすい。

心と体を整えるホルモンを正常に。

ホルモンというと、女性ホルモン、男性ホルモンなどの性ホルモンを思い浮かべがちですが、実はそれは多くのホルモンのほんの一部です。

ホルモンとは、体内を巡って健康や若さを維持しようとする化学物質の総称で、体の各部から多くの種類が分泌されているのです。

最近では幸せホルモンの呼び名で知られてきているのが脳内伝達物質のセロトニンや、睡眠ホルモンのメラトニン。ほかにもさまざまな脳内伝達物質や、血糖値を下げるインスリンはじめ、食欲や代謝、再生などに関わるものなど、多くのホルモンがあります。

脳の視床下部が司令塔となって、必要に応じて量の増減などを指示しているのですが、体内時計のリズムが狂ったり、肥満や生活習慣病、ストレスといったことが原因でこのホルモンがうまく分泌されないことや、出すぎてしまうことがあります。

それが不調や不眠の大きな原因になることが知られてきています。不足したり過剰になると、疲れや元気に関わる代表的なホルモンとその働きを紹介します。

(心身のバランスを保ち、再生を助ける大切なホルモン)

【血糖コントロールホルモン】→ インスリン
食事で血液中のブドウ糖(血糖)が増えると余った糖を体脂肪に変えて血糖値を下げるインスリンが分泌される。血糖値の上下が激しく、インスリンが大量に分泌されると、急激に血糖値が下がり、異常な脱力感を感じる。

【食欲抑制ホルモン】→ レプチン
食べすぎると脂肪細胞から分泌され、食欲を抑えるホルモン。常に多量に分泌され続けると、効果が低くなってしまう。太りすぎは疲労の原因にもなるので、レプチンを正常に分泌させるのが大切。

【快楽ホルモン】→ ドーパミン、アドレナリン
脳内で分泌される神経伝達物質で、楽しい、気持ちいいなどと感じるためのホルモン。アドレナリンはドーパミンから生まれ、危険やストレスに対応するが、交感神経優位になり、怒りや不安も強くなる。反動で脱力感を感じる。

【やせホルモン】→ GLP-1
太っていると慢性の炎症が起こり、免疫力が落ちて感染症にもなりやすいが、GLP-1はリンパ球やマクロファージなどの免疫細胞に働きかけ、健康を維持しようとするホルモン。食欲を抑え、肥満を防ぐ作用もある。

【骨ホルモン】→ オステオカルシン
骨を構成する成分はたんぱく質とカルシウム。そのたんぱく質の一部がオステオカルシンというメッセージ物質で、骨への刺激で外へ分泌されると、血糖値を安定させたり、臓器を若返らせる働きをする。

【幸せホルモン】→ セロトニン
脳内で作られる神経伝達物質で、日光に当たるとトリプトファンというアミノ酸を材料に体内で作られる。足りないと脳の機能低下が起こり、精神の不安定や疲れの原因になる。腸にも大量に存在し、免疫機能を助けている。

【睡眠ホルモン】→ メラトニン
1日のリズムをコントロールする脳内で作られるホルモンで夜に増えて自然な眠りを誘う。セロトニンが原料で、昼間にしっかり日光を浴びてセロトニンの分泌を増やしておくと、夜、メラトニンの分泌も多くなる。

【再生ホルモン】→ 成長ホルモン
組織や細胞の成長や再生を助ける働きがあるホルモンで、就寝後、2〜3時間後に分泌量が増える。十分な量があると、血管や内臓をはじめ、全身の新陳代謝を促し、古い組織を新しい組織に作り替えるのを助ける。

【若返りホルモン】→ DHEA
DHEAは男性ホルモンや女性ホルモンの原料になる物質。炎症を抑えたり、インスリンの働きを助けるなど、さまざまな働きもしている。筋肉を保ったり、生活習慣病を改善する働きもあり、若返りホルモンとも呼ばれます。

【覚醒ホルモン】→ コルチゾール
ストレスで分泌量が増えるのでストレスホルモンの別名も。糖新生でエネルギーを作ったり、たんぱく質や脂肪が代謝するのを助ける。朝たくさん分泌され、夜は少なくなってリズムを整えるが、分泌しすぎるとうつや不眠に。

疲れ対策のカギになる体内時計と生活リズム。

意志で変えられない自律神経のバランスやホルモンの分泌を整えるのが、生活のサイクルを正すことです。規則正しい暮らしで、生活にメリハリをつけ、毎日体内時計をリセットするのが一番の自律神経対策です。

体内時計とは、本来、体に備わった機能で、時計遺伝子という生活リズムの計画表を元に、体にリズムを伝える時計たんぱくが働く仕組み。目覚めて活動し、眠って休息するという1日のリズムを作る仕組みです。

人の体内時計は24.5時間なので、本来少しずつずれていくのを、朝日や食事で微調整し、24時間サイクルに合わせてリズミカルに暮らすのが健康にいいという話を聞いたことがあると思います。

現代のように夜も社会が動いている時代には、どうしても暮らしが夜型にずれていき、体内時計が狂ってしまい、それが自律神経を乱し、原因不明の不調や疲れを招いているとわかっています。

決まった時間に起き、決まった時間に食事をし、究極のオフモードである睡眠に向けて、行動や環境を整える。これが自律神経のバランスを整え、ホルモンを有効に活用し、健康な体を維持するポイント。まさに「一晩寝たら元気になる」というリズムです。

工藤孝文

工藤孝文 さん (くどう・たかふみ)

内科医、漢方医

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療に携わる。著書に『やせる出汁』(アスコム)、『疲れない大百科』(ワニブックス)など多数。テレビ『ガッテン!』『ホンマでっか!? TV』などでも活躍。

『Dr.クロワッサン 免疫力を強くする、疲れない体のつくり方。』(2020年6月26日発行)より。

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

この記事が気に入ったらいいね!&フォローしよう

SHARE

※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は本体のみ(税抜き)の価格です。税込表記の商品は、配信日が2019年9月30日以前の記事は消費税8%、2019年10月1日以降に配信の記事は10%(軽減税率適用のものは8%)が含まれています。