製品を開発する技術者に求めるのは、音が出る瞬間のエネルギー、ダイナミクスをあまさず再現すること。そして長時間聴いていても疲れずに楽しめる音であること。
「加えて、音楽に絶対必要なものが色気。でもこれは言葉だけでは技術者に伝わりません。色気のある音とはどんな音か、たとえばお腹から発声する声の周波数はこうなる、とぜんぶ数値にして説明しないと伝わらないんですね」
音楽のこと、オーディオのことを語る小川さんは生き生きとして、ほんとうに楽しそう。だがその会社人生は順風満帆だったわけではない。30歳のときにプロジェクトが解散、好きな仕事から引き離されてしまう。だがそんな彼女を救ったのも音楽だった。会社を辞めようか悩んだとき、先輩にジャズを演奏しないかと誘われたのだ。