歴史のある家の当主として、各地に散らばった墓所に参り、ゆかりの地を訪ね、縁ある人に会う旅を続ける。その模様をエッセイ風に綴ったのが本書だ。なにしろ特徴のある苗字であるだけに、若い頃から苦労も多かったようだ。
「小さい頃はあまり意識しなかったんですけど、平仮名にすると10文字もありますから、名前を書く欄からはみ出しちゃうんです。なにより目立つし、悪いことはできないといつも思っていました」
大学にたまたま家系図を持っていった時、そんな古いものに縛られているのかと吊るし上げにあったこともある。一方で、つねに先祖の功績がつきまとうのも悩み。
「たとえば徳川家康、石田三成の子孫の方と座談会をしたのですが、どうしても先祖が成したことによって測られてしまう気がして。自分は自分、もっとフリーで見てほしいという抵抗感はありましたね」
とはいえ現当主としての責任感から、四国や九州、東北など各地の墓所をまとめて供養することができないか奔走している最中だ。